「ブランドを成長させるカギは、差別化ではなく“想起されやすさ”と“購入のしやすさ”である」
これは、USJをV字回復させたことで知られる森岡毅氏や、マーケティング学者バイロン・シャープ氏の主張に共通する、現代ブランド戦略(シャープ理論)の基本原則です。
両氏は、企業が打ち出す差別化に消費者はほとんど気づいておらず、購買意思決定に大きな影響を与えていないと指摘しています。差別化よりも、ニーズが生まれたその瞬間に、いかに自社ブランドが「真っ先に想起されるか」が重要だと提唱しています。
そして、この「想起」を支えるのがキャッチフレーズです。
キャッチフレーズが認知されていることによって、ニーズが発生した際にブランド名が想起され、購買へとつながる確率が高まるのです。
本記事では、様々なカテゴリーにおいて実際に使われているキャッチフレーズを紹介し、その法則性(型)を解説していきます。
型に沿ったキャッチフレーズを作ることで、想起されるブランドへと着実に近づき、購買行動を促すことができます。

深井 貴明
広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
ただライティングするのではなく、マーケティング戦略から見直し、成果につながる言葉を生み出すことを信条としている。
想起されやすいキャッチフレーズ事例集
キャッチフレーズは、あればいいというものではありません。
ニーズが発生したときに商品名が想起されなければ意味がありません。そのためには、ニーズと商品名がしっかりと結びついているキャッチフレーズである必要があります。
ではここで、ニーズと商品名がしっかりと結びついているキャッチフレーズを紹介します。
健康・美容系
- 「シミ・そばかすには、ハイチオールC」(エスエス製薬)
- 「疲れに、アリナミンA」(アリナミン製薬)
- 「おなかの脂肪を減らす、ヘルシア」(花王)
- 「目の疲れには、ブルーベリーアイ」(わかさ生活)
- 「眠れない夜に、グリナ」(味の素)
- 「肌の悩みに、オバジC」(ロート製薬)
- 「腰の痛みに、バンテリン」(興和)
- 「髪のボリュームが気になったら、サクセス」(花王)
- 「加齢臭が気になったら、DEOCO」(ロート製薬)
- 「汗のニオイに、Agデオ」(資生堂)
- 「足の疲れに、休足時間」(ライオン)
- 「肩こりに、サロンパス」(久光製薬)
- 「眠れない夜に、蒸気でホットアイマスク」(花王)
- 「血圧が高めの方に、GABAチョコレート」(江崎グリコ)
- 「コレステロールが気になる方に、リセッシュコレステ」(花王)
- 「糖質が気になるあなたに、ロカボ食品」(各社)
- 「骨の健康に、カルシウムグミ」(森永製菓)
- 「おなかの脂肪を減らす、ヘルシア」(キリン)
日用品系
- 「しつこい汚れには、マジックリン」(花王)
- 「手荒れに、アトリックス」(ニベア花王)
- 「トイレのニオイに、消臭力」(エステー)
- 「油汚れに、ジョイ」(P&G)
- 「部屋のカビが気になるなら、カビキラー」(ジョンソン)
仕事・学習・運動
- 「集中したいときに、メガシャキ」(ハウス食品)
- 「朝の目覚めに、モンスターエナジー」(モンスタービバレッジ)
- 「ストレスを感じたら、リラックスする紅茶」(リプトン)
- 「バイト探しはIndeed」(リクルート)
- 「スポーツの後はポカリスエット」(大塚製薬)
- 「乾杯をもっとおいしく。」(サッポロビール)
ライフスタイル系
- 「本を売るならブックオフ」(ブックオフ)
- 「やめられない、とまらない」(カルビー)
- 「聞いて驚くな。実家は意外とやることないぞ。」(Netflix)
- 「湿気が気になるなら、ドライペット」(エステー)
- 「どうする?GOする!」(GO株式会社)
競合より先に想起されるキャッチフレーズの作り方(3つの型)
キャッチフレーズの事例を見ていると、一定の法則があることに気づきましたか? 主に3つに分類できます。
では、これらをキャッチフレーズを作る3つの型としてご紹介します。
1.具体・解決型
「◯◯には、△△」「◯◯に、△△」「◯◯になったら、△△」など、具体的な悩みと商品名を直接結びつけるパターンが特に多く見られました。
- 「シミ・そばかすには、ハイチオールC」(エスエス製薬)
- 「目の疲れには、ブルーベリーアイ」(わかさ生活)
- 「腰の痛みに、バンテリン」(興和)
- 「疲れに、アリナミンA」(アリナミン製薬株式会社)
- 「眠れない夜に、グリナ」(味の素株式会社)
- 「しつこい汚れには、マジックリン」(花王株式会社)
- 「加齢臭が気になったら、DEOCO」(ロート製薬)
- 「部屋のカビが気になるなら、カビキラー」(ジョンソン)
- 「髪のボリュームが気になったら、サクセス」(花王)
2.特徴強調型
「◯◯する、△△」「◯◯な方に、△△」と特長を明示するパターンもありました。
- 「おなかの脂肪を減らす、ヘルシア」(花王)
- 「骨の健康に、カルシウムグミ」(森永製菓)
- 「コレステロールが気になる方に、リセッシュコレステ」(花王)
3.シーン型
「◯◯の後は△△」「◯◯するなら△△」「◯◯なときに△△」といったシーンに合わせて商品を想起してもらうパターンもありました。
- 「スポーツの後はポカリスエット」(大塚製薬)
- 「乾杯をもっとおいしく。」(サッポロビール)
- 「集中したいときに、メガシャキ」(ハウス食品)
- 「本を売るならブックオフ」(ブックオフ)
- 「どうする?GOする!」(GO株式会社)
- 「聞いて驚くな。実家は意外とやることないぞ。」(Netflix)
以上、3つの型がありました。
この型に沿って書けば、ニーズが生じた際に思い出してもらいやすいキャッチフレーズが作れます。
私が考えるに、紹介した3つの型のいずれかを使うのがベターです。型にハマらないコピーを考えるのは、高度な技術ですし、そこまでリスクを犯すメリットがありません。成功確率の高い型に沿ってコピーを考えるのが賢明です。
世の中には、先に紹介した型に当てはまらないキャッチフレーズが多くありますが、想起を目的とする役割から考えると役割を果たしていないと言えます。たとえ、有名なキャッチフレーズだったとしても、です。
役割を見失わず、果たせるキャッチフレーズを作りましょう。
キャッチフレーズをどこで使えば良いのか
「キャッチフレーズを作ったけど、どこで使えば良いの?」
キャッチフレーズができたなら、そんな疑問を抱くはずです。
大手企業のように、マスメディア広告を使いキャッチフレーズを発信すればいいのか。私の答えは、「キャッチフレーズのために1円たりともお金を使ってはいけない」です。
キャッチフレーズは、広告や販促物のついでに載せている程度で良いのです。
具体的には、
- Webサイトのキャッチフレーズ
- Web記事下やフッター周り
- 会社概要ページ
- 企業アカウントのプロフィール欄
- 配信メルマガのフッターかヘッター
- YouTubeやPodcastの概要欄
- 配信物の最初か最後
- 販促物すべてのブランド名やロゴの近く
(チラシ、リーフレット、パンフレット、カタログ、はがき、DM、封筒)
など。
広告や販促物に載せるようにすればいいのです。一言コピーですので、邪魔になりません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
上記の3つの型を参考にすれば、比較的簡単にキャッチフレーズが作れるはずです。
ぜひ、ニーズと商品名がしっかりと結びついているキャッチフレーズを作り、一番に想起される強力なブランドを築いてください。
以下、参考文献