【セット販売の危険な罠】その売り方では価値を落とします

「複数の商品をセットにすれば、売れるんじゃないか?」
もし、そうお考えなら少し待ってください。

提供する商品の数を多くすれば、お客は価値を多く見積もってくれる、というわけではありません。やり方を間違えれば、かえって価値を低くしてしまう場合もあるのです。人は、複数の商品を「合計」ではなく「平均」で考えるクセがあるからです。

詳しく解説します。

この記事を書いた人
セールスコピーライター
深井 貴明

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

目次

行動経済学による実験

行動経済学の実験を2つご紹介します。

ティーセット実験

3つの被験者グループを用意。
被験者には、A、Bのティーセットに値段を付けてもらいます。

Aセット:24枚の食器
Bセット:Aセット+16枚(傷あり)の食器

1番目のグループには、両方を見せて値付けをしてもらう。
2番目のグループには、Aセットだけを見せて値付けをしてもらう。
3番目のグループには、Bセットだけを見せて値付けをしてもらう。

1番目のグループは、Aセット30ドル、Bセット32ドルと、Bセットにやや高い値段を付けました。論理的に考えれば、BセットにはAセットもついているのですから、当然の結果です。

面白いのはここからです。
片方しか見せられていない2番と3番のグループは、Aセットに33ドル、Bセットに23ドルの値段を付けたのです。

カード実験

カードのセットを用意し、オークションに出して、値付けの動向を調査しました。
用意したカードセットは2つ。

Aセット:価値の高い10枚
Bセット:Aセット+価値の低い3枚

普通に考えれば、Bセットのほうに高い値が付くはずです。Aセットもついているわけですからね。しかし結果は、Aセットのほうに高い値が付きました。

つまり、どういうことか

2つの実験を通じて言えることは、低価値が高価値の足を引っ張り、全体の価値を下げてしまったということです。つまりは「人は足し算ではなく平均で評価する癖がある」ということを示唆しています。

コラム / 高いものに埋もれたら、高値で売れる!?

行動経済学で有名な逸話を一つご紹介します。
1970年代、イタリアの宝石商ジェームス・アセールは、黒真珠を市場に売り込もうとしたものの、全く売れずにいました。旧友の宝石商ハリー・ウィンストンに相談したところ、彼はニューヨークの高級店に黒真珠を置き、強気の値段で売り出したのです。すると、ニューヨークのセレブたちの目に留まり、流行るようになりました。

高価なものが当たり前に置かれているお店だったからこそ、見慣れない黒真珠でも相応のものに映ったに違いありません。

プライベートな話でたとえてみる

自分をよく見せるために、合コンにブサメンを連れて行くのは間違い

合コンでたとえてみましょう。
相対的に自分の価値が高まるように、自分よりもイケていない同性ばかりを連れて行くのは良策ではありません。イケていない同性に引っ張られ、自分の評価も低くなってしまうからです。それよりは、自分よりもイケている人たちを連れて行くのがよいのです。そのほうが自分の価値も高まるというもの。

もし、相対的に価値を高めたいなら、イケメンの中に自分と同じジャンル(たとえば可愛い系)で自分より少しイケていない人を一人連れて行くことです。この方法なら、平均を上げつつ、相対的な価値も高められます。
関連記事:引き立て役を使って目立たせる『おとり効果』

すごい人と写真に写る、すごくない人たち

Facebookを眺めていると、著名人とのツーショットをアップしている人を見かけます。たまに載せるぐらいなら、まぁ分かります。なかなか著名人と写真を撮る機会はないですからね。ですが、中には精力的に著名人に会いに行く人がいます。遠回しに「すごい人と付き合いがある俺もすごい人なんだぞ」と言っているのです。

Facebookがなかった頃、やたらと人脈自慢をしてくる人がいました。名刺を見せてきて、「私とこの人は知り合いなんです」と言ってくる。何でそんなに人脈自慢をしてくるのかと疑問だったのですが、要は自分を大きく見せたかったんですね。確かに、著名人の写真や名刺をたくさん見せられれば、「この人もすごい人かも」という印象を人に与えられます。本能的に、周りをすごい人で固めれば、自分の価値を高く見せられることを知っていたのかもしれませんね。

アントニオ猪木と写る筆者
アントニオ猪木の誕生日パーティーにて

まとめ

人は「合計」ではなく「平均」で見ています。よって、価値の高いモノと低いモノは一緒にしてはいけません。商品に無料特典を付けるにしても、商品の価値を下げるようなものと一緒にしないほうがいいでしょう。バランスが重要です。

商品に限らず、店舗商売でも同じです。
内装にお金をかけていても、机や椅子が安物だったら、お店全体の評価は下がります。

価値のバランス、この点を注意してくださいね。

以下、参考文献

『ファスト&スロー(上下巻)』(著 ダニエル・カーネマン)

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この記事を書いた人

深井貴明のアバター 深井貴明 セールスコピーライター

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社のコピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

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