コピーライティングに役立つ行動経済学18選

本記事では、行動経済学をコピーライティングに活かす方法について解説しています。私が専門とする進化心理学の知見も時々織り交ぜているため、理解がより深まるでしょう(ここにしかない情報です)。

2万字を超える文字数のため、目次から興味のあるところをお読みください。

この記事を書いた人
セールスコピーライター
深井 貴明

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

目次

コピーライティングに役立つ行動経済学18選

最初の印象が強く残る『初頭効果』

『初頭効果』とは、はじめに与えられた情報の影響を強く受ける心理作用です。特に事前情報を知らないまっさらな状態だとその影響は強く表れ、長く保持されます。

第一印象がわかりやすい例です。
「いい人だな」と思ったら、その印象を長く持ち続けるはずです。

「炎上」もまた初頭効果がもたらす現象の一つです。
本文を読めばまともな内容の記事でも、煽り要素がタイトルにあると炎上が起きやすくなります。タイトルの印象が強く残り、まともに本文が読めなくなる(または読まない)からです。

一文の中でも、はじめに目にする単語は強く影響します。

たとえば、

・「不倫にハマる人を見分ける3つのポイント」
・「3つのポイントで見分ける不倫にハマる人」

どちらが目を引きますか?
おそらく前者だと思います。インパクトの強い「不倫」という単語を前に持ってきているためです。

同じ意味の文を書くにしても、単語をどこに持ってくるかによって印象は大きく変わるのです。これは見出しだけではなく、本文でも同じです。

マイクロコピーの有名な事例があります。
「資料請求を無料ダウンロード」から「無料で資料をダウンロード」へ変更したところ、ダウンロード数が1.5倍になりました。無料の位置を前に持ってきただけです。これも初頭効果がなせる技です。

初頭効果は、マーケティングにも応用できます。
初めて触れる商品の満足度を高めてください。ほかの商品も同じように良いはずだとお客は思い、関連商品の購買率が上がります。
関連記事:CTAボタンに使えるマイクロコピーの書き方

最後の印象が強く残る『親近効果』

『親近効果』とは、最後の印象が強く心に残り、全体の評価に大きな影響を与える心理作用です。

映画が一番わかりやすい例ですね。
序盤がどんなに優れたストーリーだったとしても、終盤が悪ければ作品全体の印象は悪くなってしまいます。映画『ドラゴンクエスト ユアストーリー』がそれです。最後の最後で壮大なちゃぶ台返しをしてしまったために、顰蹙(ひんしゅく)を買いました。

その逆で、終盤の印象がよいものであれば、全体の評価は上がります。「終わりよければ全てよし」とは、まさに言い得て妙です。

親近効果は、マーケティングにも応用できます。
商品を販売したら、お客が商品を使い終わる頃を見計らってフォローをしてください。全体の評価は高まり、リピート率やバックエンド商品の売れ行きにも好影響を与えます。初頭効果と合わせれば効果絶大です。

コピーライティングにも応用できます。
コツは、ギャップを持たせることです。たとえば、「嫌い嫌い嫌い大っ嫌い……だけど好き」「あのお店は料金が高いし、場所も遠くにあるし、店主が無愛想ときている。なのに悔しいなぁ。あそこが出す料理はそれでも行きたくなるほど絶品なんだよ」「あいつは優しくて頭がよくて背も高い。君にピッタリだよ。もし彼に難点があるとすれば、借金があるくらいだ。一億円ほど」。こんな感じです。

セールスライティング寄りの例を挙げれば、
「こちらの商品は値段が高いですが、それだけ高性能だということです」
「新鮮な食材が手に入らなければお店を閉めることもあります。納得のいかない料理をお客様に出したくないからです」

ストレートに伝えたいことを伝えるよりも印象に残ると思いませんか。最後に上げるか下げるかは、目的に応じて使い分けてください。

初頭効果と親近効果、どっちを使えばいいの?と疑問を持たれた方も知れませんね。理想を言えば、両方です。表現レベルであれば、どちらか一つしか使えない場面もあるでしょう。構成レベルでは両方使える場合もあります。

たとえば、ブログ記事の構成です。印象に残る書き出し(初頭効果)、感情に訴えるまとめ(親近効果)といったように。

書籍『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(著 越川 慎司)に面白い分析結果が載っていました。トップ5%のリーダーは会議の際、冒頭と終わりにエネルギーを注いでいることが判りました。また、トップ5%のセールスマンも、自己紹介と質疑応答にエネルギーを注いでいることが判りました。経験によるものなのか直感によるものなのかは分かりませんが、冒頭と最後が強く印象に残ることを知っていたのです。

先に高い価格を見せて安く思わせる『アンカリング効果』

『アンカリング効果』とは、はじめに触れた情報が判断基準にまで影響を及ぼす心理作用です。

ビジネス現場で役に立つのは、次の5つです。

  1. 商品価格のアンカリング
  2. 購入金額のアンカリング
  3. 市場価格のアンカリング
  4. 店内価格のアンカリング
  5. 繰り返しのアンカリング

では、一つずつ説明します。

1つ目の「商品価格のアンカリング」について。
定価がその商品価値を表す数字となりアンカーリングされます。

仮に、定価1万円の商品が5,000円で売られていたとしましょう。あなたは1万円の価値のあるものが5,000円になったと喜ぶはずです。

これがもし、はじめから定価が5,000円だったらどうでしょう。1万円分の価値があるものが安く買えると喜ぶでしょうか。違うはずです。定価5,000円とされた商品からは5,000円までの価値しか感じないはずです。

「商品価格のアンカリング」にまつわる事例をご紹介しましょう。
アメリカのファッションブランド「JCペニー」は、定価から大きく値引きして販売するスタイルで知られていました。ところが、2021年にロン・ジョンソンがCEOに就任すると一変します。はじめから定価自体を安くしたのです。

すると、どうなったか。客離れが起きました。値引きがなくなったことで、お客はお得感を感じられなくなったからです。「JCペニー」は、1年と経たず9億8,500万ドルの純損失を計上。その後、ジョンソンは更迭。売り方は基に戻りました。

2つ目の「購入金額のアンカリング」について。
仮に、定価1万円の商品が初回に限って5,000円で買えたとします。購入時には1万円のものが5,000円になったと喜ぶでしょうが、リピートの段階になったときに悩むはずです。「初回の2倍の料金を支払うのか」と。購入時の価格がアンカリングされたためです。

売り手側にとって、このアンカリングはリピートの障壁になります。
突破するには、定期購入価格を設ける、リピート特典を設けるなどの手があります。損した気分をできるだけ和らげるのです。

3つ目の「市場価格のアンカリング」について。
これはすでにお客が商品群の価格帯(相場)を知っていて、すでにアンカーがある状態です。

このアンカーを外すには、類似性のない商品であるとアピールして、全く新しい商品カテゴリー群へとお客の認識をズラすのです。それができれば、まっさらな状態にアンカリングできるため、こちらが提示する価格が基準となります。

4つ目の「店内価格のアンカリング」について。
千円台の商品ばかりが並んでいるお店では、1万円の商品が高く感じるはずです。逆に数十万円台の商品ばかりが並んでいるお店では、1万円の商品が安く感じるはずです。

これにちなんだ話があります。
1970年代、イタリアの宝石商ジェームス・アセールは、黒真珠を市場に売り込もうとしたものの、全く売れずにいました。旧友の宝石商ハリー・ウィンストンに相談したところ、彼はニューヨークの高級店に黒真珠を置き、強気の値段で売り出したのです。すると、ニューヨークのセレブたちの目に留まり、流行るようになりました。ニューヨークというブランドの後押しもありますが、価格を含めた売る場所がいかに重要かを物語っています。

もし、値段の高さが原因であなたの商品が売れずにいたら、さらに高い商品群の中に紛れ込ませられないかと考えてみてください。相対的に売りたい商品の価値を高めることができます。

5つ目の「繰り返しのアンカリング」について。
アンカリングは「繰り返し」によって強化されます。パブロフの犬が有名ですよね。
たとえば、大阪のお客からクレームを立て続けに受ければ、「大阪の人はクレームが多い」とアンカリングされます。事実、私にはそのアンカーがあります。

補足ですが、アンカリング効果が作用するのは数字だけではありません。まっさらな状態に植え付けられた情報もアンカーになります。たとえば、何も知らない人に「◯◯は△△」「◯◯を見たら、△△だと思え」といった情報を与えれば、それがアンカリングになります。「中国製=粗悪品」「お買い得品=いつもよりも安い」といったものもそうです。

身近な例をあげれば、「セット売り=安い」「広告の品=安くなっている」もアンカリングです。これを逆手に利用している売り手もいます。セット売りなのに全然安くなっていない。広告の品なのにいつもと同じ価格。お客は安くなっているだろうと思い込んでいるので、ちゃんと確認せずに買っていくのです。詳しくは、『お客に暗示をかけて商品を売る方法』をご覧ください。

アンカリングと初頭効果ってどう違うの?

アンカリングと初頭効果は、第一印象が強く影響するという意味では同じです。違いを言えば、初頭効果は印象が残るのに対して、アンカリングは基準の植え付けです。

俺は特別な人間だ!感を刺激する『スノップ効果』

「大人気商品で、多くの方が購入されています」と言われると、かえって欲しくなくなる。むしろ、誰も購入していないものが欲しいと思ったことはありませんか? それはきっと「他人と同じになりたくない」といった気持ちが働いているからです。

他者とは異なる商品やサービスを購入したいと思う心理作用を『スノップ効果』と呼びます。ファッション系といった個性をアピールしやすいものほど、スノップ効果は表れやすいです。音楽や旅行(体験)などもスノップ効果が出やすい商品と言えます。

私が中学生の頃(1996~1998年)、JPOPが真っ盛りでした。小室ファミリーをはじめ、ゆず、スピッツ、GLAY、L’Arc〜en〜Ciel、SPEED。そんな中、この波に逆らうように私は、一人ひっそりとアニメ声優の歌にハマっていました。

このとき、JPOPに浮かれる同級生らをこう思っていました。「ふん、同じ歌手ばかり好きになりよって。どうせ流行っているから自分も好きだとか言ってんだろ。無個性な奴らめ。俺は自分が真にいいと思った歌手を見つけたんだよ」と。

クラスメイトの女子に自分が声優の歌を聴いていると教えたら、「キモい」と言われました。今思えば、私はスノップ効果をこじらせていたのかもしれませんね。

さて気を取り直して、もう少しスノップ効果について解説します。
そもそもなぜ、他者との差別化を図ろうとするのでしょう。進化心理学の観点から言えば、異性を獲得するためです。個性を発揮して、その他大勢から抜け出せれば、異性の目に留まりやすくなりますよね。加えて、人から羨ましがられれば、より異性を獲得しやすいというものです。

想像してみてください。
Appleが限定100台のノートパソコンを発売し、それをあなたは運良く手に入れたとします。その後、どうしますか。スターバックスに赴き、澄まし顔でノートパソコンを開くのではないでしょうか。そして優越感に浸るはずです。特別なノートパソコンを持っていることで何だか自分も特別な存在に思えてくるからです。

スノップ効果は、みなが有していない、体験していないことが条件になるため、必然的に希少性が条件になります。

商品なら製造数が少ない、またはオーダーメイドやオリジナルです。先述したように、羨望が得られるものならスノップ効果はより表れやすくなります。

サービスであれば、「条件が揃う必要がある」「物理的に人数に限りがある」などにスノップ効果が表れます。なかなか手に入らないチケットを欲したり、オーロラを見に行きたがるのがそうです。

ここで誤解してはいけないのは、「希少性さえあればスノップ効果は発動する」というわけではないことです。スノップ効果の本質は、個性の表現(他者との差別化)、他者への自慢です。これらが満たされていなければ、いくら希少性であっても消費意欲は湧きません。

スノップ効果をマーケティングに活かすなら、特定の人にしか刺さらないような商品を少量だけ作るのがいいでしょう。コピーライティングに活かすなら、どれだけ希少で自慢できるかをほのめかすのがいいでしょう。
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高価なものを所有していることを自慢したい『ヴェブレン効果』

価格が高い商品ほど欲しくなる心理作用を『ヴェブレン効果』と呼びます。これは資源(所得・資産)の多さでマウンティングをしたがる心に触れることで発露します。一見すると醜いですが、人の進化から考えれば自然なことです。

男性は、自分の豊富にある資源をアピールできれば異性を惹きつけられます。また、自分より資源を持たない同性を異性から遠ざけることもできます。結果的に、異性を獲得しやすくなるというわけです。

女性も最終的には異性の獲得が目的ですが、男性よりも少し複雑です。高いものを欲しがる理由は主に3つあります。

1つ目は、低所得な男性を寄せ付けないためです。高価なものを身に着けていれば、低所得な男性は近づいてきません。

2つ目は、自分のパートナーに同性を寄せ付けないためです。高級ブランドを身に着けることで、「私はパートナーから高価なものを贈られるほど愛されている」と同性にアピールしているのです。

3つ目は、セルフイメージを高めるためです。高級品を身に着けることで「自分には上位男性がふさわしい」と思い込むようになり、上位男性を狙うようになります。これをほとんど無意識にしています。

では、商品の価格さえを高くすれば、『ヴェブレン効果』が表れるのかと言えば、そうではありません。

『ヴェブレン効果』を起こすには、「A商品(orA社)は高級品」という情報を広く認知させる必要があります。A商品は高級品だと広く認知されているからこそ、その商品を買う意味が生まれるのです。誰も知らない商品を高値で買ったところで、羨望の眼差しを誰も向けてはくれませんからね。つまり、『ヴェブレン効果』を起こすには、”買わない人”に向けて広告を打つ必要があるのです。

中小企業は、自社商品やブランドを日本中に認知させるのは難しいでしょう。そこで、お客さんだけが入れるコミュニティを作り、そのコミュニティ内で通用する高額商品を用意するのです。そしてそれをアピールできる場を設けてください。これなら、中小企業でも『ヴェブレン効果』を発揮させられます。
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恩義を返したくなるのが人の心『返報性の原理』

『返報性の原理』とは、他人からよいことをされたら、こちらもよいことをしてお返ししたいと思う心です。たとえば、誕生日にプレゼントを贈られたら、その人の誕生日にはプレゼントを贈り返したいと思う気持ちがそれです。

もし贈り返さなければ、不義理な人と思われ、周りからの評価が下がってしまいます。おそらく『返報性の原理』は、社会性を重んじる人類が集団生活を円滑にしていく過程で獲得したものかもしれません。

『返報性の原理』の活用場面としてよく挙げられるのが、無料オファーです。「無料オファーを提供すれば『返報性の原理』が働いて、その後のバックエンド商品が売りやすくなる」と言われています。確かに、無料オファーを提供することは大事です。満足度が高ければ、続く有料商品も売りやすくなります。

しかし、だからといって『返報性の原理』が強く働いているとは言えません。無料オファーはもはやビジネスでは当たり前すぎて、誰も恩義に思っていないからです。「はいはい、無料オファーでリストを取るのね」と、個人情報と無料オファーをバーター取引(物々交換)していると思われています。

では、どうしたらいいのでしょうか。
お客が期待していない部分で喜ばせるのです。別の言い方をすれば、お客にとって”思いがけない行為”をして喜ばせるのです。たとえば、約束した無料オファーとは別に、告知していない別の何かをプレゼントするなど。

レストランに来店したお客にチョコを渡して、チップがどれだけ増えたかを調べた実験があります。

何も渡さなかった場合と比べて、
チョコを1個渡したら3.3%、2個渡したら14.1%チップの量が増えました。面白いのはここからです。1個渡した後に一度その場を離れ、再び戻ってさらにチョコを1個渡したら、チップの量が21.3%増えたのです。チョコを2個まとめて渡すのと2回に分けて渡すのとでは、チップの量が変わったわけです。

何が起きているか分かりますか?

一度チョコを渡したことで期待値がゼロになり、二度目のチョコは”思いがけない”ものになったのです。期待していなかった分だけ喜びが大きくなり、『返報性の原理』が強く働いたと思われます。

DRMを日本に広げた神田昌典氏とその盟友小阪裕司氏が開発した、お客をファン客にする『21日間感動プログラム』があります。初回購入日から21日後までにお礼の手紙を送ったり、プレゼントを贈ったりします。両氏はここで贈るプレゼントを「思いがけないプレゼント」と表現していました。つまり、期待していない部分にアプローチしているわけです。

前職、私も実践しました。
お客には商品購入後すぐに手厚いフォローをし、プレゼントを贈るなどしました。また、3ヶ月に一度、上位客へ特別なプレゼントを贈りました。その結果、リピート率や口コミが増え、売上は大幅に増加したのです。感謝の手紙もたくさん届きました。

お礼や感謝の手紙

もしお客にこうしたフォローがある旨を事前に伝えていたらどうでしょう。「当たり前のサービス」として受け止められていたはずです。そして売上もさほど増加しなかったでしょう。

『返報性の原理』の肝は、感動させることです。そのためには、期待していない箇所に、または期待をリセットさせてからサービスを提供します。決して「◯◯を差し上げます」などと言って期待をさせてはいけません。

あなたが感動した時のことを思い出してください。
“思いがけず”何かをしてもらった時ではなかったですか。

このことを肝に銘じて、返報性の原理を活用してください。

口に出したら満足、隠していたら感動

✔「今Aランチを注文すると、食後にコーヒーが付いてきます」とメニューに記してある場合。
✔「これ、お店からのサービスです」と、Aランチを注文した人にコーヒーを差し出した場合。
どちらのほうが喜ばれると思いますか? 後者ですよね。

サービスを事前に伝えるか伝えないか。たったその違いだけで顧客体験は全くの別物になるのです。
関連記事:満足と感動の違いとは

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何度も接触すると好嫌が強化される『ザイオンス効果(単純接触効果)』

『ザイオンス効果(単純接触効果)』は、接触回数が増えるほど好感度が高くなる心理作用として広く知られています。しかし、必ずしも好きになるばかりではありません。

思い出してください。
嫌いな人と何度も会ううちに、その人のことを好きになりましたか。それともより嫌いになりましたか。より嫌いになったという経験のほうが多いのではないでしょうか。

接触していくうちに好きになるのは、主に好きでも嫌いでもない対象物(人)に対してだけです。しかしこれは単純接触効果というよりも、「慣れ」や「自己開示」によるものかもしれません。人は、何度も接触していると脳はそれを安全だと感じるようになったり、相手を知れば共通点を見出して好きになったりするものです。

好き嫌いがはっきりしている場合は、接触回数が増すほどに感情は強化されます。「欲しいな」と思っていた商品の広告を何度か見ているうちに、より強く欲しいと思うようになります。一方、「不快だな」と思っていた広告を何度も見せられると、「ここの商品は絶対に買わない」という気持ちになります。あなたにも心あたりがあるはずです。

書籍『売れる広告 7つの法則』にも面白い調査結果が載っています。2分のCMを3回見せて「欲しいかどうか」「好きかどうか」の評価がどう変化するのか調べたものです。

2つの調査で注目なのが、いずれも「欲しい」あるいは「好き」というやや中庸な評価をした人が減っている点です。おそらくこの層が、繰り返し見ることで欲しい気持ちが高まり、「とても欲しい」や「とても好き」に移っていった層だと考えられます。

同時に、いずれの調査でも「欲しくない」とか「嫌い」というネガティブな評価も、繰り返すたびに増えていきます。これは、複数回見ることで「やっぱり欲しくないな」という判断をする人も生まれた、ということを意味していると推察できます。

繰り返すことには、もしかすると、その人のもともとの態度を強める働きがあるのかもしれません。

(132~133p)

書籍『売れる広告 7つの法則』(著 電通九州・香月勝行 妹尾武治 分部利鉱)

このことから、広告は複数回出したほうがよいと言えます。とは言え、回数が多ければよいというわけではありません。いくら好感の持てる広告でも、何度も見せられればさすがに飽きます。

SNS広告を出している人なら実感があると思いますが、1人あたりの平均表示回数が3回を上回ったあたりから、広告の反応が落ち始めます。SoftBankのテレビCM(ホワイト家族)のように、定期的に表現内容を変えていき、飽きさせない工夫が必要です。

似ている人に共感して好きになっちゃう『類似性の法則』

人は、自分と似ている人を好みます。
性格や価値観、趣味嗜好といった内面的なものだけでなく、出身地や出身校、名前、家族構成、年齢、血液型といったものが似ていても好感を抱きます。これを『類似性の法則』と呼びます。

『類似性の法則』は、「自己開示はお客から好かれる」といった話に留まりません。「あなたと似た人がこのような行動を取りましたよ」といったメッセージも強力に作用するのです。

ホテルのタオル再利用を促す実験があります。
「このホテルのお客様の75%がタオルを再利用しました」というメッセージの札を置いたところ、タオルの再利用率は20%増加しました。次に「このホテル」を「この部屋」に変えたところ、35%増になったのです。

類似性は、特に女性に強く作用します。
進化上、女性は女性同士のコミュニティを作り、そこから外されないようにと努めてきました。その証拠に、女性は男性よりも高い言語能力や社会性を有しています。

また女性は、男性よりも平等に敏感であることも様々な研究で分かっています。たとえば、ゲームの中でも友人との間に上下関係を作られると女性は動揺します(男性は逆にそれを楽しむ)。ほかにも、思春期の女子は自分だけが友人よりもよい成績をとったり、先に彼氏ができたりしたら、不安を感じることも分かっています。

このように女性は、男性と比べて同性との関係性に敏感です。そのため広告物に使う体験談やモデルは、ターゲットと類似した人を起用すると効果的です。

㈱北の達人 代表取締役社長 木下勝寿氏の著書『ファンダメンタル×テクニカル×マーケティング』にも、女性は同級生モデルを好む傾向があると記されています(ちなみに男性は劣等生モデルを好む傾向がある)。何百という会社の広告運用をして導き出した答えなのでしょうから、信憑性は高いです。

ストーリーテリングでも類似性は重要です。主人公に類似性を感じてもらえれば、読者(視聴者)は主人公に感情移入して読み(観て)進めてくれます。ストーリーテリングをセールスコピーに使うなら、お客と似た悩みを持つ人物がその悩みを解決していくストーリーを描くといいでしょう。共感して読み進めてくれるため、CVRも高まります。

さてここで、類似性を引き出す小技を一つ紹介しましょう。それは「固有名詞を使う」です。
たとえば、「私は幼稚園児の頃、ビックリマンシールを集めていました。ヘッドロココを引き当てたときは、文字通り飛び上がるほど嬉しかった」「ドラゴンクエストⅤで、ビアンカにするかフローラにするかで三日三晩悩んだ末、フローラを選んだら、友達から最低だと罵られた」

「ビックリマンシール」「ヘッドロココ」「ドラゴンクエストⅤ」「ビアンカ」「フローラ」といった固有名詞を見た瞬間、遊んでいた幼少期の記憶や感情を思い出したはずです。このように固有名詞は、時代や感情、状況を一瞬で頭に描かせる強力な武器なのです。

映画やアニメを見ていて、自分が知っている場所や物が出てきたら、一気に好感を持つはずです。思い入れがあるものだったらなおさらでしょう。

ちなみに私は、國府田マリ子の大ファンです。
彼女の歌の中で一番好きなのは、アルバム『Pure』に収録されている『長雨』です。この記事を読んでいる99.999%の人には伝わりませんが、0.001%の人には伝わります。伝わった人はきっと「おお心の友よ!」と思ってくれたはずです。私までご連絡ください。

引き立て役を使って目立たせる『おとり効果』

本命商品よりも少し劣った商品を用意すると本命商品が魅力的に映る。これが『おとり効果』と言います。

『おとり効果』のコツは、本命商品と似た特徴を持つ商品を置くことです。
たとえば、処理能力の速さが売りのAパソコンを売りたいなら、処理能力だけが少し劣ったA’パソコンを横に置くのです。「Aパソコン 180,000円(メモリー32G)」「A’パソコン 140,000円(メモリー16G)」とします。これなら4万円多めに払ってもAパソコンを買ったほうがよいなと判断されるでしょう。

間違っても、本命商品の特徴と関係のない商品をおとりとして使わないことです。「Aパソコン 180,000円(メモリー32G)」の隣に「シャア専用ザクデザインのパソコン」を置いても、Aパソコンのおとりにはなりません。

合コンで例えるなら、
かわいい系の自分がモテるためには、同じ可愛い系だけど自分よりは見劣りするB子ちゃんを連れて行くのです。きれい系のC子ちゃんを連れて行ってもおとりにはなりません。

行動経済学で有名な『おとり効果』の事例があります。
経営学専攻の学生に英経済誌『エコノミスト』の定期購読の選択をしてもらったものです。

1⃣ウェブのみ購読  59ドル   68%
2⃣冊子&ウェブ購読 125ドル  32%

これに、3つ目の選択肢を入れます。

1⃣ウェブのみ購読  $59  16%
2⃣冊子のみ購読   $125 0%
3⃣冊子&ウェブ購読  $125 84%

どう見ても2⃣はおとりです。ですが、2⃣を置くことにより、3⃣の選択が「利口な判断」となったわけです。

価格帯を3つ用意する売り方と言えば、「松竹梅」が有名ですね。真ん中の竹が選ばれる傾向にあるのはご存知の通り。これには、『極端回避性』が働いていると言われています。松を注文して価格に見合わなかったら嫌、梅を注文して安かろう悪かろうだったら嫌。そんなリスク回避が働いているのです。

ほかにも、『極端回避性』を強めて竹に注文を集中させるやり方があります。一言で言えば、松の価格を上げるのです。

ビールを使った実験があります。
価格の異なるビールを2種類用意し、後から価格の高いビールを追加して、売れ行きを観察したものです。

Aビール 80セント   33%
Bビール 2ドル60セント 67%

ここに、Cビールを加えたら、

Aビール 80セント   14%
Bビール 2ドル60セント 67%
Cビール 3ドル     19%

Aビールが減った分、Cビールの注文が増えたのが分かります。
上の価格を一つ用意しただけで客単価が上がったのです。

さらに、Cビールの価格を上げてみたら、

Aビール 80セント   0%
Bビール 2ドル60セント 90%
Cビール 3ドル40セント 10%

AビールとCビールの注文が減り、Bビールに注文が集中しました。

Cビール価格を高くしたことにより、相対的にAビールは今まで以上に安物になりました。味への不安や安いものを注文する恥ずかしさが増し、注文数が減ったと考えられます。また、Cビールを高くしたことにより、Cビールの注文を諦めてBビールを選ぶ人が増えたと考えられます。

このように、松の価格を変えるだけでも竹梅に大きな影響を与えるのです。

ちなみに、セールスの世界でもお客には複数の選択肢を与えたほうがよいと言われています。一つだけでは「買うか、買わないか」の100:0の選択になりますが、2つ以上の提案があれば「AとB、どちらにするのか」の選択になります。本命以外に2つほど、おとりを仕込んでおきましょう。人は自分で選択したとなれば、納得感も違います。
参考記事:Twitterで『自分の提案を通すなら2つの案を持って行け』という教えに従ってからびっくりするくらい効果があって本当に感謝している
関連記事:売りたい商品を10倍売る「選択の科学

先生の言うことは絶対です『権威生の法則』

人は、「先生」と称される者に対して服従の姿勢をとります。これを『権威性の法則』と呼びます。

たとえば、医者が出す薬は誰もが言われたとおりに服用するはずです。医者もいちいち薬の説明はせず、価格も言いません。「お薬出しておきますね」で終わりです。けれども患者のほうは「薬を売られた」という認識はありません。こんな売り方、ほかではありえないでしょう。

人が権威性に服従する理由は2つあります。
1つ目は、自分より地位の高い人間に従ったり真似たりしたほうが、自分で考えて行動するよりも成功率が高いからです。2つ目は、自分で考える必要がない分、脳の消費エネルギーを節約できるからです。人の脳は多量なカロリーを消費するため、ショートカットできるところはショートカットしようとします。

もし、権威性に従わなかったらどうなるでしょうか。
すべて自分で調べて体験しなければならなくなります。「自分の目で確かめない限り信じない」なんてことを言っていたら、時間がいくらあっても足りません。権威に従うのは、確かに合理的ではあるのです。

『権威性の法則』が絶大な効果があることは多くの研究から認められていて、ビジネスでも広く使われています。たとえば出版物のタイトルや帯、著者のプロフィールには、「東大生」「医科大の教授」「年収一億」「◯大会で優勝」など、権威性を表す肩書きが踊っています。

権威性を示すものは、肩書きだけではありません。見た目もです。
初めて会った人の素性が分からない時は、人は見た目で社会的な立場を量ります。服装や身につけているアクセサリーを確認して、権威性の有無を認識しているのです。お金儲けを教える情報商材屋が、見せびらかすように高級腕時計をしているのもそのためです。
関連記事:【悪用厳禁】『権威性の法則』で人を従わせるための8大要素

利得を得るよりも損失を回避したい『損失回避性』

『損失回避性」とは、利得よりも損失を嫌う心の動きです。

行動経済学では、損と得とでは1.5〜2.5倍受け止め方が違うとの研究結果が出ています。仮に1万円を得る喜びを+100と表現したなら、一万円を失う悲しみは−100ではありません。−150〜−250です。このように人は、マイナスへの感情の振れ幅がプラスの感情よりも大きいのです。

これを端的に証明できるゲームがあります。コインゲームです。
「裏が出たら1,000円を失う、表が出たら◯◯◯円を得られる」とし、◯◯◯円がいくらだったらゲームに参加をするのかを尋ねます。多くの人は、裏(損)-1,000円に対して表(得)+1,500~2,500円ならゲームに参加すると答えます。損への感度が高いことが見て取れますね。

594人(男性404人、女性190人 10〜70代)を対象にした調査では、裏1,000円(負け)に対して、男女の平均は2,499円でした。男女で分けると男性平均2,355円、女性平均2,804円。女性のほうが男性よりも損失回避性が強く働いていることが分かります。

ということは、割高な買い物をしてしまった時のショックも女性のほうが大きいでしょう。私の妻も、ほかのお店のほうが安く買えた事実を知ると、怒ったり落ち込んだりします。「数十円程度、どうでもいいじゃん」と傍目で思いながら見ています。

女性のほうが損失回避性が強く働くなら、「セール」や「無料」といった言葉にも強い反応を示すはずです。実際、セールの多い楽天モールのメイン客は30~60代の主婦層です。例に漏れず、私の妻も楽天の愛好家です。このように、商業現場でも女性の損失回避性の強さは表れているようです。

一方男性は、損失回避性の感度が女性よりも低いです。女性よりもギャンブル性が強いとも言えます。2014年発表された厚生労働省の調査報告によると、ギャンブル依存症の数は、男性438万人:女性98万人です。圧倒的に男性のほうがギャンブルにハマりやすいのです。

こうした損失回避性の性差は、進化の名残だと考えられます。
狩猟採集時代、男性はギャンブル性の高い狩りを生業にしていました。一方女性は、ほぼ確実に手に入る木の実や野草の採集を生業にしてきました。狩猟採集時代から築き上げてきたものが現代にも表れているわけです。

さて、損得を広く定義すれば、快・不快です。
経済的な損は「悲しみ」、得は「喜び」ですから、こうした感情が人間の行動主軸とも言えます。行動分析学でも、「人は、不快(嫌子)を避け、快(好子)が得られる行動をする」とされています。

400人の脳をスキャンした実験でも、恐怖はニュートラル時と比べて、脳(扁桃体)が7倍活性化しました。ちなみに、SEXは4.8倍です。また、医療チームによる実験では、患者に恐怖を煽ってワークショップを進めた場合と、煽らないでワークショプを進めた場合とでは、前者のほうが後者の4倍以上も申し込みが多くなりました。

これも進化から考えれば当然です。
狩猟採集時代は死と隣合わせでした。恐怖に鈍感な人間は、生き残ることは難しかったはずです。

セールスライティングには、『PASONAの法則』という不安を煽る型があります。高い効果を発揮するとして、この世界では一二を争うほど有名な型です。それもそのはず。なぜなら『PASONAの法則』は、日本人には特に有効だからです。その背景にあるのは、「セロトニン」の分泌量の少なさです。

セロトニンという脳内物質は、分泌量が多ければ幸福感を覚えますが、少なければ不安を覚えます。日本人は世界で最もセロトニンの分泌量が少ないことで知られていて、不安を覚えやすい民族なのです。つまり日本人は不安を煽る『PASONAの法則』とはすこぶる相性がよいのです。

ちなみに、不安の場合は周りと足並みを揃えたくなるため『バンドワゴン効果』が強く働きます。
関連記事:日本人に『PASONAの法則』が効果的である3つの根拠

同じ意味でも言い方で印象が変わる『フレーミング効果』

『フレーミング効果』とは、同じ意味でも言い方や切り取り方でイメージや印象が変わることを言います。「物は言いよう」というやつです。たとえば、「真面目⇔頑固」「好奇心旺盛⇔飽きっぽい」「赤点ばかり⇔伸び代がある」がそうです。

ほかにも、大きさを表すのに「東京ドーム◯個分の広さ」「レモン◯個分のビタミンC」といった表現もあります。また、「タウリン1gをタウリン1,000mg」と単位を変える表現もあります。どれも意味するものは同じですが、表現を変えてイメージや印象を変えようとしています。

事例をさらにビジネス寄りにしていきましょう。

  • 「2着目買えば50%OFF⇒2着目無料」
  • 「1時間2,000円⇒15分500円」
  • 「1日50円の節約⇒年間18,250円節約」
  • 「10%の当たり⇒10個に一個が当たり」
  • 「75%の成功率⇒8人中6人が成功」

どれも、後者のほうが効果のある表記ですね。

いくつかのコツがあるのでお教えします。
「2着目買えば50%OFF」ではなく「2着目無料」と”無料”の言葉を用いた表現のほうが消費意欲をより刺激します。「1時間2,000円」ではなく、「15分500円」と桁を少なく見せたほうが数字(コスト)を小さく感じます。その逆で、「1日50円の節約」ではなく、「年間18,250円節約」と桁を多く見せたほうが数字(節約金額)を大きく感じます。

「10%の当たり」ではなく「10個に1個が当たり」、「%」よりも「◯人中△人」と表現したほうがイメージしやすくなります。「%」といった確率を考えることが人は不得意だからです。「ポイント10%還元」と「10%割引」では、後者のほうがお得ですが、直感的に同じだと思ってしまう人は多いです。

ほかにも、「1g」よりも「1,000mg」、「1,000mg」より「◯◯が△個分」と表記したほうが訴求力は高まります。数字は、確率より実数、実数よりイメージと覚えておきましょう。

ポジティブワードとネガティブワードの使い分けも説明しておきます。
たとえば、「成功率80%」「失敗率20%」は、同じ意味のことを言っていますが、どちらで表現するかによって与える印象は異なります。行動してほしい時はポジティブな言葉、行動してほしくない時はネガティブな言葉を使うようにしましょう。

これを端的に表した実験があります。
被験者に以下の文を読ませ、設問に答えてもらいます。

【被験者に読ませた文】
「600人が死亡すると予想される特殊なアジア病の流行に備えて、2つの対策が提案されている」

【設問1】
・対策Aを行うと、200人が助かる。
・対策Bを行うと、1/3の確率で600人が助かるが、2/3の確率で誰も助からない。

被験者の回答は、対策Aが72%、対策Bが28%。

【設問2】
・対策Cを行うと400人が亡くなる。
・対策Dを行うと、1/3の確率で誰も死なないが、2/3の確率で600人全員が亡くなる。

被験者の回答は、対策Cが22%、対策Dが78%。

言っている内容は同じでも、表現が異なるだけでこうも選択が変わるのです。

フレーミング効果とシャルパンティ効果の違いって?

質量の異なる物体を見たときに、大きいものほど軽く、小さいものほど重く感じる心理効果です。

たとえば、羽毛1kgと鉄1kg、どちらのほうが重そうに感じますか? 同じ重さですが、鉄のほうがなんだか重そうに感じたはずです。鉄は羽毛に比べて小さい分、重そうに感じてしまうのです。

同じ1万円でも同じ価値ではない『感応度低減化』

「ビールは最初の1杯目が旨い!」
2杯目3杯目と続くと、その感動(感度)は低減します。これを「感応度低減化」と呼びます。

お金でも同じです。
数千円、数万円の買い物は散々悩む一方で、数十万、数百万の買い物は思い切りがよい。そんな経験はありませんか。

たとえば、

A 1,100円と1,200円。
B 100,100円と100,200円。

同じ100円の差ですが、Aと比べてBの100円差なんて大したことないと感じませんでしたか? これが『感度低減化』です。

主婦が、数十円の節約のためにスーパーを変えたり、セール時間を狙って足を運んだりします。たとえ野菜一つ安く買えたとしても数円、数十円の違いでしかありません。しかし『感度低減化』から見れば大きな違いなのです。

10万円の商品を200円安く買うよりも、200円の商品を20円安く買うほうが気持ちが良いのです。野菜を50円安く買えた人が、10万円のバッグを50円安くされたからといっても喜びませんよね。いやむしろ「ケチだ!」と言って怒るかもしれません。同じ50円安くなっているのですから、同じように喜べばよいはずなのに。

このことから言えることは、「高額商品を売れ」です。
100万円の商品を買う痛みは、1万円の商品を買う痛みの100倍ではありません。価格が大きくなるに連れて『感応度低減化』は進むため、価格ほど売りにくくはないのです。言葉は少し悪いですが、「価格が大きくなればなるほど人は鈍感になり、財布の紐は緩む。だから、高額商品は熟慮せずに買っていく」ということです。

数千円や数万円の商品は、お客は冷静に考えるためかえって売りにくく、むしろ数十万円以上の商品のほうが売りやすいです。

中途半端だとスッキリしない『ツァイガルニック効果』

これから面白くなるというところで話が終わると、続きが気になって仕方がないですよね。リアルタイムの番組なら1週間待たなくてはいけませんが、配信動画なら我慢できず、続きをついつい見てしまいます。気づけば午前様なんてことも。私はアニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』でこれをやっちゃいました。

このように中途半端な状態を解消したがる心理作用を『ツァイガルニック効果』と呼びます。

この心理を利用したビジネス手法に私たちは日々接しています。たとえば、肝心な情報を見せず、「続きはWebで」とサイトに誘導するCM。漫画の一部を無料で見せて、これから大きく話が転換する場面で会員登録を迫る販促。

週刊誌でも、『ツァイガルニック効果』を狙った見出しばかりです。たとえば、「女優◯◯熱愛発覚!気になるそのお相手とは」「会見では語られなかった◯◯の離婚の真相とは」など。続きを読みたくなる工夫が施されています。

コピーライティングには、「1行目の目的は2行目を読ませるためにあり、2行目の目的は3行目を読ませるためにある」という有名な言葉があります。

私はこうも考えます。
「1ページの目的は2ページ目を読ませるためにあり、2ページの目的は3ページ目を読ませるためにある」と。ページを開かせるのに有効なのが、この『ツァイガルニック効果』なのです。1ページ目の最後をいいところで終わらせて、次のページを開かせるようにします。

DM封筒のコピーも、「◯◯な方にのみお送りしている特別な招待状です。詳細は中身をご覧ください」とし、封筒を開かせるよう促します。このように『ツァイガルニック効果』は、要所要所で使える手法です。ぜひ覚えておきましょう。

禁止されるとしたくなっちゃう『カリギュラ効果』

「見ちゃダメ」
そう言われると余計見たくなりますよね。こうした心理作用を『カリギュラ効果』と呼びます。

江戸時代は、女性の胸は今ほどエロと結びついていませんでした。その時代の女性は胸を人前に晒すことは珍しくなく、男性もスケベな気持ちでそこまで見ていなかったと言われています。明治以降、「女性が胸を見せるのは卑猥な行為」とする西洋的な価値観が入り、女性は胸を隠すようになりました。これに伴い、男性は胸に対して強い欲望を持つようになったのです。

また童話にも『カリギュラ効果』を思わす話があります。
有名どころでは「鶴の恩返し」「浦島太郎」です。前者は「部屋を覗かないでください」とお願いされたにもかかわらず、見たいという衝動を抑えきれず、思わず覗いてしまいます。後者は「開けてはなりません(じゃなぜ渡した?)」と言われた玉手箱をやはり衝動を抑えられず開けてしまいます。

隠されると見たくなる。欲しくなる。価値があるように思えてしまう。人の心にはそんな癖があるのです。

『カリギュラ効果』を引き出す鍵は、「秘密(隠・裏)」「制限(禁止)」にあります。

「秘密」の例を挙げれば、「雑誌の袋綴じ」「秘密の隠れ家」「シークレットCLUB」「隠れキャラ」「隠しコマンド」「隠し技」「裏技」「裏情報」「裏の手」「秘伝のタレ」「秘宝の◯◯」。こうした言葉は、魅力(魅惑)を醸し出していますよね。

「制限」の例を挙げれば、「一見さんお断り」「◯◯を満たした人だけがご利用できます」。
ほかにも、商品の効用やポリシーの信憑性を高めるために、あえて制限を謳うやり方もあります。たとえば、「このナンパ術は、あまりに効果があるため悪用厳禁です」「本当に怖いホラー映画なので、一人では見ないでください」「ラクして稼ぎたい人は購入しないでください」。

『カリギュラ効果』を活用して、商品の魅力や効用、ポリシーの信憑性を高められないか考えてみましょう。

「みんなの評価」に流される『バンドワゴン効果』

集団の選択に影響されて自分も同じ選択をしようとする心理作用を『バンドワゴン効果』と呼びます。行列を見たら並びたくなるのがまさにこの心理です。言い方を変えれば、人は集団の選択(意見・行動)に流されやすいのです。

この『バンドワゴン効果』は、強い意思決定を持たない人、または失敗を避けたい人に強く働きます。具体的に説明しましょう。

まずは、「強い意思決定をしていない人」について。
たとえば、自分の中で「これが食べたい」という強い意思がある人は、その食べ物を選ぶでしょう。一方、何を食べたいか決めかねている人は、友人らから「スパゲティを食べに行こう」と誘われれば、その提案に乗ってしまうかもしれません。また友人らが「広島牡蠣を贅沢に使ったカルボナーラ」「じゃ私も」「僕も」と注文すれば、あなたも同じものを注文するかもしれません。

人には、「みんなと足並みを揃える(社会規範)」という名の同調圧力があります。自分だけ別の行動を取れば協調性がないと評価されて、仲間外れに遭うのではないかと不安になるはずです。狩猟採集時代、仲間外れは「死」を意味するため、人は強い不安を覚えるよう進化しているからです。

この不安に打ち勝つだけの強い意思を持ち合わせていなければ、人は周りの選択に同調します。とりわけ東洋人にはこの傾向が顕著です。

強い意思決定はどこから来るのでしょうか。
それは、こだわりや価値基準からです。

たとえば私の場合、恋愛映画は映画館では観る価値はないと思っているので、どんなにヒットしている作品であろうと劇場で観ることはありません。

私のように、「たとえ周りがAを選ぼうが、私はAを選ばない(またはBを選ぶ)」といったものが、あなたにもあると思います。こうした強いこだわりや価値基準があれば、大衆の意見に惑わされなくなります。

とはいえ、大体の消費において人は、これといったこだわりや価値基準を持ち合わせていません。ですから、ビジネス現場において『バンドワゴン効果』は有効に働きます。

次に「失敗を避けたい人」について。
行列ができている飲食店に入ろうと思った経験、あなたにもあると思います。その時、何を思いましたか?

おそらく「人気なのだから、少なからず不味くはないだろう」と思ったのではないでしょうか。みんなが買っているものを欲するのは、こうした失敗回避の心理が関係しているのです。

飲食店の選択といった、ささやかな失敗の回避でも『バンドワゴン効果』は表れます。これがもし健康問題やコンプレックスに関わる選択なら、さらに強く表れるのは想像に難しくないでしょう。

たとえば、治療法を選ぶ際、「みんなが受けている治療法です」と言われたら安心すると思いますが、「10人しか受けた人がいない治療法です」と言われたら、心配になりませんか。このように人は、失敗を避けたいとき、周りの選択を強く意識するのです。

これとは反対に、自己PRしたい欲求は購入者が少ないことに価値を見出します(スノップ効果)。「まだ世界で100台しか出回っていません」と言われると買いたくなる心理がそれです。

つまり、失敗を避けたい場合は「みんなの選択」を好み、自己PRしたい場合は「みんなの選択」を嫌うのです。

以上が『バンドワゴン効果』が強く作用する属性です。これに当てはまるお客がターゲットなら、バンドワゴン効果を最大限活かしましょう。
関連記事:『社会的証明の原理(バンドワゴン効果)』が働く5大要素と活用法

他者の評価のほうが信じられる『ウィンザー効果』

人は当事者よりも第三者の評価を信頼するものです。
たとえば、売り手が「A商品は素晴らしい」と言うよりも、購入者が同じこと言ったほうが信頼されます。これを『ウィンザー効果』と呼びます。

『ウィンザー効果』で大切なのは、利害関係のない人からの評価であることです。商品を売っている企業はもちろんダメです。アフィリエイターも利害関係者のため、『ウィンザー効果』は半減します。

また、インフルエンサーにお金を払ってレビューしてもらったり、やらせレビューを書いてもらったりするのもご法度です。ほかにも、高評価レビューと引き換えに特典を与える販売者もいますが、当人が儲かったとしても業界全体が損をします。ズルが蔓延れば、レビューを純粋に信じられなくなるからです。

実際、レビューを疑いながら見るようになった人は多いです。こうした背景から、売り手はズルをしていないことの証明、または信憑性を担保する必要が出てきたのです。

では、どうすればいいのでしょうか。
具体的な方法は3つあります。

1つ目は、手書きのお客様の声です。手書きは書き手の癖が出るため信憑性が高まります。また手間がかかることから利用者の熱意も感じられます。

2つ目は、プライバシーの一部公開です。
レビューを書いてくれた方の顔写真や名前、年齢、住所(都道府県)などのプライバシーを一部載せます。または顔や声を加工していない動画を公開します。顔と実名を載せているSNSアカウントの信頼性が高いように、プライバシーを公開したほうがレビューの信憑性は高まります。

3つ目は、SNS上の感想です。
購入者が勝手につぶやいた感想を見つけ、Webサイトに埋め込みます。SNS上のつぶやきは素の言葉だからこそ嘘偽りのない感想と分かります。このとき、不満のつぶやきも載せておくのが肝要です。売り手にとって都合の悪い情報も一緒に載せることで、信憑性が一層高まります。

こうした工夫をして『ウィンザー効果』を最大限発揮させてください。

「合計」ではなく「平均」で価値を評価する

特典やおまけをたくさん提供すれば、申し込み率は上がる。
そう考えているなら、少し待ってください。

提供する物の数が多ければ多いほど、お客は価値を多く見積ってくれるというわけではありません。
やり方を間違えれば、かえって価値を低くしてしまう場合もあるのです。

人は、複数の商品を「合計」ではなく「平均」で考えるクセがあるからです。

行動経済学の実験を2つご紹介します。

ティーセット実験

3つの被験者グループを用意。
被験者には、A、Bのティーセットに値段を付けてもらいます。

Aセット:24枚の食器(24ピース)
Bセット:Aセット+16枚(傷あり)の食器

1番目のグループには、両方を見せて値付けをしてもらう。
2番目のグループには、Aセットだけを見せて値付けをしてもらう。
3番目のグループには、Bセットだけを見せて値付けをしてもらう。

1番目は、Bセットにやや高い金額を付けた。Aセット30ドル、Bセット32ドル。
論理的に考えれば、BセットにはAセットもついているのですから、当然の結果です。

面白いのはここからです。
2番目と3番目のグループは、1番目が付けたAセットの値段よりも高い値段を付けたのです。

カード実験

カードのセットを用意し、オークションに出して、値付けの動向を調査しました。
用意したカードセットは2つ。

Aセット:価値の高い10枚
Bセット:A+価値の低い3枚

普通に考えれば、Bセットのほうに高い値が付くはずです。Aセットもついているわけですからね。
しかし結果は、Aセットのほうに高い値が付きました。

この事象から何を学べるのか。
人は「合計」ではなく「平均」で見ているということです。つまり、価値の高いものと低いものは一緒にしてはいけないのです。商品に無料特典を付けるにしても、商品の価値を下げるようなものを用意してはいけません。

商品に限らず、店舗商売でも同じです。内装にお金をかけていても、机や椅子が安物だったら、お店全体の評価は下がります。価値の高低、このバランスを気にしてください。

関連記事:進化心理学によって行動経済学を理解し、ビジネスに応用する

以下、参考文献

『無料より安いものもある』(著 ダン・アクエリー)
『行動経済学の使い方』(著 大竹 文雄)
『「ココロ」の経済学 行動経済学から読み解く人間のふしぎ』(著 依田 貴典)
『マンガでわかる 行動経済学』(著 ポーポー・ポロダクション)
『予想どおりに不合理』(著 ダン・アリエリー)
『不合理だからうまくいく』(著 ダン・アリエリー)
『アリエリー教授の「行動経済学」入門』(著 ダン・アリエリー)
『不合理な地球人』(著 ハワード・S・ダンフォード)
『思わずためしてみたくなる行動経済学』(著 平野敦士)
『今日から使える行動経済学』(著 山根 承子 / 黒川 博文 / 佐々木 周作 / 高阪 勇毅)
『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』(監修 阿部 誠)
『スゴい行動経済学』(著 橋本 之克)
『実践行動経済学』(著 リチャード・セイラー / キャス・サンスティーン)
『認知バイアス辞典』(著 情報文化研究所)
『脳科学マーケティング100の心理技術』(著 ロジャー・ドゥーリー)
『影響力の武器』(著 ロバート・B・チャルディーニ)
『PRE-SUASION』(著 ロバート・B・チャルディーニ)
『ファスト&スロー(上下巻)』(著 ダニエル・カーネマン)
『消費資本主義』(著 ジェフリー・ミラー)
『脳にはバグが潜んでいる』(著 ディーン・ブオノマーノ)
『愛と怒りの行動経済学』(著 エヤル・ ヴィンター)
『女と男 なぜわかりあえないのか』(著 橘 玲)
『友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化心理学』(著 ロビン・ダンバー)
『ことばの起源 猿の毛づくろい、人のゴシップ』(ロビン・ダンバー)
『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く 人間のやばい本性』(著 セス・スティーヴンズ)
『われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか』(著 ウィリアム・フォン・ヒッペル)
『モテるために必要なことはダーウィンが教えてくれた』(著 ジェフリー・ミラー / タッカー・マックス)
『欲望の錬金術』(著 ローリー・サザーランド)
『売れる広告 7つの法則』(著 電通九州・香月勝行、妹尾武治、分部利紘)
『ザ・マイクロコピー』(著 山本 琢磨)
『#HOOKED 消費者心理学者が明かす「つい、買ってしまった。」』(著 パトリック・ファーガン)
『ファンダメンタル×テクニカル×マーケティング』(著 木下勝寿氏)
『成約コード』(著 クリス・スミス)
『脳科学マーケティング100の心理技術』(著 ロジャー・ドゥーリー)
『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』(著 阿部 誠)
『スマホ脳』(著 アンデシュ・ハンセン) 
『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』(著 ターリ・シャーロット)
『競争の科学』(著 ポー・ブロンソン&アシュリー・メリーマン)
『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(著 越川 慎司)

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この記事を書いた人

深井貴明のアバター 深井貴明 セールスコピーライター

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社のコピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

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