信頼と安心と信用の違いを理解して、マーケティングに活かす

ビジネス上、よく耳にする言葉に「信頼」「安心」「信用」があります。「信頼される会社」「安心安全をモットーに」「信用第一」など。あなたの会社の社訓にも「信頼」「安心」「信用」のワードが一つぐらい入っているかも知れませんね。

では、これら3つの違いをあなたは説明できますか?
そう言われると、ちょっと言葉に詰まりますよね。

実は、頻繁に使っているワードでありながら、きちんと説明できる人は思いのほか少ないのです。

そこで本記事では、この3つの違いについて解説します。
「信頼」「安心」「信用」の違いを理解できれば、お客の期待に応えられるようになるでしょう。また、自社に足りないものが見え、広告や販促、営業にも役立つはずです。

では解説します。

この記事を書いた人
セールスコピーライター
深井 貴明

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

目次

信頼は、2種類ある

はじめに取り上げるのは「信頼」です。

実は、信頼と一言で言っても2種類あります。一つは、能力への信頼。もう一つは、意図(人柄)への信頼。

2つの信頼の違いを理解してもらうために、一つの思考実験にお付き合いください。
あなたにとって、人間的に信頼できる人を思い浮かべてください。両親でもいいですし、親友でもいいですし、師匠でもいいです。あなたを裏切らず、あなたのためを思って行動してくれる人です。

さて、その人にあなたが乗るヘリコプターの運転を任せられますか? おそらく任せられないと思います。免許がありませんからね。いくら人間的に信頼が置けるとしても、「能力への信頼」がないため、任せられないのです。

このように信頼は、「能力」と「意図」の2つに分けられます。

ビジネスに置き換えてみましょう。
能力への信頼とは、「商品の品質」や「サービスの技量」を指します。意図への信頼とは、欺く気持ちがあるのか、誠意を持って対応してくれるのかといった姿勢を指します。

どちらの信頼も大切ですが、甲乙を付けるなら「意図」のほうが上です。信頼の置ける人間は、粗末な商品を売らないだろうと人は考えるからです。

逆に、いくら品質が良かったとしても、信頼できない人から商品を買おうとは思いません。個人情報を悪用されるのではないか、後で高いものを売りつけられるのではないかなどと、不安を覚えるからです。

信頼を獲得する方法

お客に能力を伝えるのは、そんなに難しくありません。大抵の場合、能力は客観的事実として提示できるからです。

たとえば、商品への科学的根拠や統計データ、満足度アンケートの結果、レビュー、推薦状、受賞歴やメディア掲載歴などがそうです。あなたの会社でも、販促物やLPにこれらの情報を掲載して、商品の品質を信じてもらおうとしているはずです。

難しいのは、意図への信頼です。
人の心や意図は、客観的事実では証明できないからです。

では、どうやったら意図を信じてもらえるのか。行動や姿勢で示すしかありません。

信頼される行動の一つに「商品のデメリットを伝える」があります。
デメリットを伝えることでお客から「会社よりもお客を優先している」と思い、信頼を寄せてくれます。これはセールスの世界ではよく知られた手法です。セールスライティングでも同様です。デメリットを伝えたLPは、CVRは向上します。

「この会社(人)は信頼できる」と思わせる場面は、売り込み時だけではありません。

たとえば、

・クレームへの対応や対策が早い
・電話応対が丁寧でレスポンスが早い
・経営者の理念に沿った活動をしている
・社会貢献活動をしている
・慈善事業団体に寄付をしている
・スタッフが仕事への誇りを持っている
・スタッフとお客の仲がよい
・社員が権限を持って現場判断している
・上司と部下との関係に信頼がある
・お客に対しても厳しいことを言う

などです。
これらの活動をしっかりと広報しましょう。

たとえば、

・Webサイトの会社概要に理念や寄付活動を載せる
・ニュースレターやブログでお客との交流場面を載せる
・Googleビジネスに付いたレビューに真摯に返信する
・クレームに対してどのように改善したのかを載せる
・経営者は従業員満足度を高める努力をする
(結果的に、顧客への応対がよくなる)

こうした行動は、真にお客や社員、社会のことを考えていなければできません。意図への信頼を得ようと見せかけだけの行動をしても、すぐにメッキが剥がれてしまいます。

コラム / 人材採用でも2つの信頼を見られる

人材採用の場面でも、採用担当者は2つの信頼を見ています。
学歴や資格を見て「能力への信頼」を判断し、職歴や志望動機を見て「意図への信頼」を判断します。書面だけでは、意図への信頼がまだハッキリしないため、面談をして最終判断を下します。無意識ですが、人材採用でも能力と意図への信頼を見ているのです。

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安心とは、リスクがないこと

「300万円貸してください」
そう知人からお願いされたらどうしますか?

返却日や返せる目処を聞き、人柄を見て判断する人もいるかも知れません。誰だろうと絶対に貸さない人もいるでしょう。

絶対に貸さない人にもう一度聞きます。
「担保として500万円相当の金塊をここに置いていきます。もし約束の期日までに返せなければ、金塊はあなたのものにしてください。誓約書も置いていきます」といった条件だったらどうですか。

「まぁ、それならいいか」と考え直すかもしれませんね。
この「金塊(リスクがない)」が「安心」に繋がったからです。

このように、損をしないことを確約(約束)されていれば、誰でも「安心」して取引ができるはずです。これを「安心取引」と言います。一方、能力や人柄を見て行う取引は「信頼取引」と言います。

昔の銀行は、企業の製品や技術に将来性はあるのか、経営者は信頼に足る人物なのかを見て、融資の判断を下していました(信頼取引)。今は、融資額と同等以上の担保があるかどうかを見て融資の判断を下しています(安心取引)。

安心の提供は、意図への信頼にも寄与する

先の金塊のように、300万円借りるために500万円相当の担保を置いていく行為は、返済する気があることを態度で示しています。つまり、意図への信頼にも繋がっているわけです。

これと似たことが戦国時代でも行われていました。
武将は、配下に下る武将らに人質(親族)を出すように命じます。これにより、裏切られないという「安心」を手に入れると同時に、「恭順の意」(意図への信頼)を見ていたのです。

ビジネスに置き換えてみましょう。
お客に安心と意図への信頼を与える方法は、2つあります。
一つは、「保証」です。もう一つは「アフターサービス」です。

よく使われるのが「返金保証(満足保証)」です。
「ご満足いただけなければ全額返金」「成果が出なければ全額返金」といったものがそうです。トレーニングジムのRIZAPもこれで一躍有名になりました。時間を要する高額なサービスに返金保証を設けたのは大胆なものでした。

「返金保証」を超える「圧倒的な保証」を用意するのも効果的です。
「返金保証を超える保証なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、それがあるのです。

たとえば、「全額返金だけではなく、迷惑料として◯◯◯◯円をお支払いします」「全額返金保証。その後も、効果が出るまで無料で施術します」などがそうです。絶対的な自信があることや騙す意図がないことを示せます。

そもそも返金保証は、お客の損失を100%補償していません。心理的な落胆や使用時間といったものはお金では補償できないからです。返金保証は、見方によっては「お金を返すから文句を言わないでね」とも受け止められます。ある意味、責任放棄です。ですから、まだまだ保証のやりようはあるのです。

アフターサービスも、損をさせないためにあります。
お客が抱える損は何なのか。損をさせないサービスは設けられないかと考えてみてください。

たとえば、LP制作。納品した時は、クオリティの高さに満足してもらったとしても、成果が出なかったり、後から修正が必要になることもあります。もし、HTMLが分からないクライアントなら、納品後のアフターがなかったり、有料だったりすると困ります。

そこで、納品後の半年間は編集を無料でする、素人でもいじれるLP制作サービス(例 ペライチ)やLP制作用プラグイン(例 Elementor )で制作するといったサービスも用意します。

このように、お客が損を回避できるサービスを用意してあげましょう。お客は安心して購入に踏み切れます。

信用とは、失うものの大きさ

「目的は何だ。金か? なら信用できるな」と言うシーンをアニメで時々見かけます。私の知識や経験から言えば、お金が目的という人間は、全く信用に足りません。余裕で裏切ります。

信用に足る要件とは何か。
それは、失うものがあるかどうか。大きいかどうかです。

失うものとは、積み上げてきた信頼、イメージ、評判、知名度などです。失うものがない人や企業には、「信用」はありません。私たちはこれを直感的に理解しています。

その直感を体験してみましょう。
あなたはテレビを買おうと家電量販店に来ています。目の前には、メーカーの違う2台のテレビがあります。片方は有名企業、もう片方は無名企業。前者は20万円、後者は18万円。ぱっと見の映像美や機能に違いはありません。同サイズの4Kテレビです。

さて、あなたならどちらを購入しますか?
多くの人は前者を選ぶはずです。

なぜ、前者を選ぶのでしょうか?
おそらく、有名企業のほうが無名企業よりも壊れにくいと考えたからではないでしょうか?

ではなぜ、そう思ったのか。
直感的に「有名企業が粗悪品を売るはずがない。粗悪品を売れば、評判が下がり失うものが大きいから。それに比べて無名企業は失うものが小さい。だから粗悪である可能性も高い」と思ったからです。

これが「信用」です。

失うものの大きさがお客を裏切らないという担保となり、それが「信用」になるのです。「失うものの大きさ(リスク)=信用」と言っても差し支えありません。

ネット上における「実名・顔出し」と「匿名」とでは、人は前者の発言を信用します。身バレというリスクを負っているからです。

スーパーの野菜売り場で見かける生産者の顔写真も同じです。「生産者の顔が見えて安心だわ」の言葉の裏には、「身バレのリスクを負っているのだから、粗悪品は売らないだろう」といった解釈が働いているのです。

信用は「知名度」がカギ

信用とは失うものの大きさ、つまりは積み上げてきた信頼、イメージ、評判、知名度だと述べました。とりわけ「知名度」が重要です。もし過失を犯した場合、知名度が高いとそれだけダメージも大きくなります。逆説的に言えば、「有名」であるということは「信用」でもあるのです。

知名度は、ブランドにも大きく関与します。
「ブランド(ブランディング)に知名度は関係ない」と言うコンサルもいますが、違います。知名度とブランドは大いに関係があります。

時計ブランド「ロレックス」を例に解説しましょう。
ロレックスは、ロレックスが高級時計だということが“買わない”層にまで知れ渡っているからこそ、ステータスアイテムとして価値があるのです。もし誰も知らなければ、「ギラギラした時計しているね」で終わってしまいます。

つまりブランドは、“買わない”層にまで認知が広まって、はじめてブランドとして成立するのです。ブランド企業が、自社のブランドを買わない層が読んでいる雑誌にまでイメージ広告を出しているのはそのためです。少し極端なことを言えば、ブランド価値とは、購入しない層からどう思われているか、どこまで知られているかで決まるのです。

有名・高級ブランドほど、過失を犯せば“買わない”層にまでイメージ低下を招きます。それに連動してブランド価値も低下します。つまり、知名度が高いほど、失うものは大きいのです。

以上のことから、知名度の高さは「信用」になります。

コラム / 高学歴ヤンキーが存在しないわけ

私たちは、人や企業の「信用」を直感的に理解していると述べました。この直感は正しく、信用のある企業ほど些末な商品を売りません。説明してきた通り、割に合わないからです。

人で考えてみると分かります。
ヤンキーはなぜ低学歴なのか。正しくは、低学歴だからヤンキーになれるのです。彼らには積み上げてきたもの(勉強といった努力)がありません。そのため、いくらでも粗暴でいられるのです。いわば「無敵の人」です。

一方、日頃から勉強してきた学生には、積み上げてきたものがあります。粗暴な振る舞いをしてそれをフイにしては、割に合いません。

よって、高学歴ヤンキーは存在しないのです。

まとめ

「信頼」「安心」「信用」について解説しました。

まとめるとこうです。
・信頼は2種類。「能力への信頼」と「意図への信頼」。
・安心とは、リスクがないこと。
・信用とは、失うものがあること。

3つとも近い概念のため区別するのが難しいですが、記事を読んでくださった方は、違いが分かるようになったはずです。それに伴い、どうやってこれら3つをお客に提供できるかも、見えてきたのではないでしょうか。ぜひ、ビジネスの現場で役立ててください。

以下、参考文献

『安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方』(著 山岸 俊男)
『欲望の錬金術』(著 ローリー・サザーランド)

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この記事を書いた人

深井貴明のアバター 深井貴明 セールスコピーライター

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社のコピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

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