今、マーケティング業界から注目を集めている会社があります。『株式会社北の達人コーポレーション』です。営業利益率29%、新卒初任給は日本で2番目に高く、東証一部上場まで果たしています。
そんな達人コーポレーションが運営しているオリジナルブランドに『北の快適工房』があります。主に化粧品を扱っているのですが、ここの記事LPをぜひ見てもらいたいのです。選ばれたマーケッターやクリエイターらが作った記事LPです。
どう思いましたか?
私はこの記事LPを見た時、2つの考えが順に来ました。「えっ、業界トップのLPデザインがこのレベル!」「いや待てよ。やっぱりこれで正解なんだ」です。
今回は、新進気鋭の通販会社の記事LPを題材に、デザインについて語りたいと思います。
広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。
デザインは良くも悪くも目立ってはいけない
「えっ、業界トップの記事LPデザインがこのレベル!」となぜ思ったのか。
それは洗練されたデザインには見えなかったからです(ごめんなさい)。
どこか胡散臭く、安っぽいデザインです(記事LP内でも「胡散臭い広告でしょ(笑)?」と自認しています)。
にもかかわらず、このデザインを採用しているのは、おそらくCVRが高かったからでしょう。
楽天市場のLPも大抵はごちゃごちゃしていて、デザイン性は高くありません。いろいろ試した結果、あのデザインに落ち着いているのです。デザインをとやかく言うのは、デザインを勉強した人間だけかもしれませんね。
私も広告物を作るようになって、デザインを気にするようになりました。デザインを学ぶ以前の私は、「コピーさえよければ売れるでしょ! デザインなんて自己満」と唾棄していたものです。
今思うとデザインの深さを知らずに、なんて浅はかな考えをしていたのかと恥ずかしくなります。ですが、一周回って、浅はかな自分が言っていた言葉が真に近かったのです。それで、「いや待てよ。やっぱりこれで正解なんだ」となったわけです。
私の知るセールスデザイナーもこう言います。
「どんなにデザインを良くしても、コピーが弱かったら売れない」と。
消費者は、広告物のデザインなんて大して気にしていません。デザインは、コピーや写真の邪魔をしない程度で良いのです。
一番やってはいけないのは、デザインが前面に出てくることです。コピーや写真の訴求を弱めてしまいます。
NHK番組『美の壺』でスーツを扱った回がありました。
うろ覚えなのですが、こんなことを言っていました。
「スーツ姿の人とすれ違った時、『おっ、素敵なスーツを着ているな』と思われるようでは駄目。着ている人とスーツが馴染み、何とも思われないのがいいスーツ」。
これはデザインにも通じます。
ユーザーから「このLPのデザインいいね」と思われたら駄目なのです。
私と同じような話をひろゆき氏とメルカリで働いていた森山大朗氏もしているので、ご参考まで。
参考
で。…
その彼女が口を酸っぱくして言ってたのが、
・うちで働くような連中は日本国民全体から見たら”偏っている”んだよ
・それを自覚できないと、すぐ「カッコいいデザイン」「意識高い系のプロダクト」を作ろうとしてしまう
・その結果、珍しいけど万人からは使いにくいプロダクトが出来上がってしまう
・かっこよくしようとするな
・洗練させようとするな
・自分と全然違う属性の人も含めて、誰にとっても直感的で、戸惑いようがないUI/UXを目指せ
・「ちょっとダサいかも」くらいで丁度いい
社内ではこの考え方を総称して「しまむら理論」と呼んでいました。
しまむらさんは、日本の主に郊外を中心に多数の店舗を持つ、言わずと知れた大手衣料品チェーンストア。
彼女は、しまむらで買い物をする人たちの、真っ当な感覚をちゃんと想像してみようね、と繰り返し、他のメンバーに伝えてくれていたのです。
プロダクト開発の現場は終わりなき課題解決の連続です。
放っとけば「改善」と称して、ゴテゴテと追加の要素ばかりが増やしがち。
そうではなく、あえて大胆に何かを捨てる。
使い手の想像力に寄りかかることのない、誰にでも伝わる直感的デザインが遵守されていたのでした。
あのシンプルで飽きの来ないデザインは、彼女のような人材が持つ、プロダクトへの愛やデザインへの深い造詣によって支えられていた事は、僕だけでなく多くの社員が理解していたはずです。
さんも、開発現場で”足し算の開発”が多くなりがちだと思いますが。
「何か足したら何かを引く」
「デザインは最終的にはちょっとダサいくらいで丁度良い」
そういう心構えで大胆に削ぎ落としましょう。
今日は以上です。
ありがとうございました。
森山大朗(たいろー)のnoteより
結果(お客の評価)だけを見ていれば、解に近づく
デザインを学んだといっても、所詮私はセールスライターあがりです。そのおかげもあってか、デザインを主役にしない考え方は受け入れやすいです。もしデザインに軸足をおいていたら、素直に受け入れられなかったと思います。
そんな私から見て、Web・LPデザインのアニメーションは愚の骨頂です。たとえば、ページを開いたらアニメーションが始まり、半ば強制的に見せられるサイト(終わらないと次に進めない)があります。私はそんなサイトに出くわしたら、「ウザっ」とついつい漏らしてしまいます。あなたもストレスを感じたことがあるのではないでしょうか。
ですが、これが同業者にはウケるのです。
「お前、いいセンスしているな」と。
ユーザーからしたら、いい迷惑ですよね。
以前、とある評論家がこんなことを言っていました。
「売れ続ける芸人は視聴者の評価を気にする。売れなくなる芸人は同業者の評価を気にする」
この言葉は、ほかの業界でも当てはまるはずです。
Webマーケティングで言えば、CVRや滞在時間、離脱率などがユーザーからの評価です。この評価を見て、Web制作に関わる者たちは日々改善をしていけば、解に近づきます。間違っても同業者の評価なんて気にしないでください。どんなにダサダサなデザインでも、売れればそれが正解なのです。
洗練されたデザインを学ぶのではなく、結果が出ているデザインを学ぶ。受け入れがたい事実だとしても受け入れる。その先にしか、デザインの解はありません。
DRMで成功する広告は、大抵ダサい(洗練されたデザインではない)
DRM(ダイレクト・レスポンス・マーケティング)を日本に広めた人は神田昌典氏です。2000年頃、神田氏は『ダントツ企業実践会』を主催し、会員4,000社を集めました。毎月送付されるニュースレターには、会員が作った広告物(成功例)が載っています。私はそのほぼすべてに目を通しています。
また、神田氏の盟友である小阪裕司氏が主催する『ワクワク系マーケティング実践会』にも、私は所属していました。ダントツ企業実践会と同様、毎月発行されるニュースレターには、会員が作った広告物(成功例)が載っていました。
2つの会の成功例を見てきて言えることがあります。それは、「デザイン性の優れたものはほとんどなかった」です。Wordで作ったセールスレターに手書きのチラシ。そんなのばかりです。
LPも例外ではありません。
デザイナーは得てして、見栄えを気にするあまり、コピーの視認率を下げてしまうデザインを施してしまいます。その結果、CVRを下げてしまうのです。
私が成果報酬型で作ったLPがあります。
このLPは、デザイン性も高くありませんし、写真も平凡です。ですが、40%以上の人が最後まで読んでいます。下手にデザイン性を高くしたら、こうはなっていないでしょう。
では、デザインは無価値なのか。
レスポンス広告において、デザインが出る幕はあまりありません。ですが、イメージ広告では必要になります。デザイン性の高いイメージ広告は、ブランド力を高めてくれます。ブランドが確立されていれば、レスポンス広告を打った際、反応が高まるのです。
関連記事:【知らなきゃ恥】イメージ広告とレスポンス広告の違いとは
余談ですが、デザイナーが成果よりもデザインに凝ってしまう理由がもう一つあります。凝ったデザインや洗礼されたデザインにしないと高い料金を請求できないからです。つまり、ダイレクト広告でデザイン性を高めるということは、高いお金を払って効果が出ない広告物を作るようなものです。
まとめ
今注目の通販企業を題材にデザインについて見解を述べました。
デザインを否定するつもりはありません。力みすぎない程度で良いのです。このさじ加減を覚えると、無駄なエネルギーをかけずに済みます。