今、NHKドラマ『正直不動産』を面白く見ています。
※原作は漫画です。
主人公の永瀬財地は、「ライアー永瀬」という異名を持つ嘘つきセールスマン。それがとあるきっかけ(祟り)で、嘘がつけなくなります。否応なく、今までとは真逆の営業を強いられることに。
正直営業マンになった永瀬。お客が希望した物件にも「こんな物件はやめたほうがいいですよ」と本音が口から出てしまいます。物件の欠点を聞かされたお客は激怒したり、クレームも増えたりと散々です。営業成績はガタ落ち。しかし、次第にデメリットや欠点を正直に伝える姿勢が信頼を得るようになり、成績は回復し始めます。
そんなのはドラマの世界だけだと思われるかも知れません。しかし、営業経験者なら、現実離れした話ではないと知っています。正直な営業は、確かにお客から信頼され、営業成績にも反映するからです。
あなたみたいな営業マンを探していた
東京ビッグサイトでは、毎日何かしらのイベントが開催されています。数多くの企業がブースを構え、来場者との商談に励みます。私も前職では、年に3回ほど出店していました。
来場者から製品の質問をされたときの話です。
私は、製品について第三者機関の検査データをもとに、以下のように来場者の質問に答えました。
「Aについては、これこれといった検査データがありますので、ニーズにお応えできます。Bについては、残念ながらいいデータは得られませんでした。Cについてはそもそも検査したことがありません。ただ、これは私の推測なのですが、〜〜というニーズに近い検証データがありますので、可能性はゼロではないと思います」
「できること」「できないこと」「個人の見解」を区分して伝えたところ、とても感心されました。
「君はいいね。いや実にいい。君のように欠点を素直に話してくれる営業マンって少ないんだよ。名刺を頂戴。君が私の担当になってくれ」
その後、先の相手から電話をいただき、営業に来てほしいと言われました。そして「君じゃないと嫌だからね」と念押しまでされたのです。
似たような話は、いくつもあります。私に限らず、営業マンなら誰もが経験をしているはずです。
正直営業の本質とは
商品の欠点やデメリットを伝えれば、お客から信頼される。心理学では、「両面提示の法則」として広く知られています。セールスの世界でも、トップセールスマンらが実践知として書籍などで伝えています。
ではなぜ、商品のデメリットや欠点を伝えると信頼されるのか。それは、自分(会社)の利益よりもお客の利益を優先していると思われるからです。
真の信頼とは、能力や知識、実績や成果だけでは得られません。「騙そうとしていない」「私のためを思ってくれている」といった姿勢や意図が伝わってはじめて得られるものなのです。
ただし、「デメリットや欠点を伝えれば成約率が上がる」とテクニック的に捉えてはダメです。それでは本質を見失います。正直営業の本質は、相手のためを思い行動する「誠実さ」です。誠実さが「正直営業」という形で表れているだけなのです。
企業レベルでも同じことが言える
個人レベルだけの話ではありません。組織(会社)レベルでも同じです。
こんなTwitterがありました。
ツイートで紹介されていたのは、『おたくのやどかり』という名の不動産会社です。公式アカウントでは、「社員が全員オタクの平和で安全な会社。ぼったくり不動産業界の裏側を大暴露、定期的に予防策を呟きます」とあります。まさに、ニッチマーケットに特化した正直不動産です。
アカウントの人気ぶりを見れば、正直な営業スタイルが評価されているのが分かります。
詭弁術でも使われる誠実さ
人は、誠実な人間を信頼します。この心理を逆手にとって論敵を倒すのが詭弁術です。いかに論敵が誠実さに欠けた人間なのかを訴えるのです。
たとえば、衆人に向けて論敵についてこう語ります。「彼は主張を通すことで利益を得ている」「彼はスポンサーの利益のために発言している」「彼は過去に人を騙した前科がある」と。
自分の誠実さを伝えるには、その逆をするのです。実際に自分が利益のために動いていない、むしろ損をしているといった自己犠牲を示します。自己犠牲を払うほど真摯に向き合っているという印象を衆人に与えるのです。
自己犠牲は嫌だなと思う方もいるでしょう。しかし、長期的に見たらこのほうがメリットは大きいのです。目先のお金よりも「この人は信頼できる」という”評価”を重んじたほうが結果的にお金やほかの資源も得られます。今で言う「評価経済社会」です。
「評価経済社会」の提唱者は評論家の岡田斗司夫氏です。実践者は芸人であり絵本作家の西野亮廣氏ですね。彼の活躍ぶりは知ってのとおりです。詳しくは、こちらの動画をご覧ください。
誠実さは営業だけの話ではない
正直営業の根底にあるのは「誠実さ」だとお伝えしました。
真にお客の利益を考えたとき、営業スタイルは必然的に正直になるはずです。
営業に限らず、カスタマーサービス、マーケティング、コミュニティ運営でも誠実さは大切になります。そしてその姿勢は評価として返ってきます。
ネットの普及により評価が可視化されるようになった今、評価は企業価値を決める重要なものです。
ぜひ、評価が集まるようなスタイルを心がけるように励みましょう。
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