『映画大好きポンポさん』に学ぶ、人を説得させる伝え方

「90分台に収まらない映画は駄作である」
私が持つ映画への評価軸です(異論は認める)。

この評価軸を持つきっかけになった1本の映画があります。『マイ・フレンド・フォーエバー』です。初めてこの映画を見たのは中学生の時。ボロ泣きしながら視聴し、90分間でこれほど人に感動を与えられるものなのかと驚きました。それからというもの、この映画が私の評価軸になりました。

100分超えの映画を見ると、「当然、マイ・フレンド・フォーエバーを上回るものを見せてくれるんだろうね!」と勝手に期待値を上げてしまいます。まぁ、その期待に応えてくれるものはそうそうありませんが……。

最近、私と同じ価値観を持つ映画に出合いました。映画『映画大好きポンポさん』です。(ここから先はネタバレを含みます)

ポンポさんは、「90分以上の映画は嫌い」と断言します。そしてこの映画自体も90分に収まるという粋な作りになっています。この作品の良さを延々と語りたいのですが、そろそろ本題に入ります。

あるシーンから、セールスライティングが学べるのです。どのシーンかというと、アランが取締役らを相手にプレゼンをする場面です。

プレゼンシーン

アランは会議の中で、ジーンが監督を務める映画への融資をお願いします。しかし、ヒットの期待が持てないと言い、役員たちは席を立ちはじめました。アランは呼び止めるように「まだプレゼンは終わっていません!」と声を上げ、一本の動画を流します。

動画からは、出演者をはじめとしたキャストらが、映画への思いや期待、心情を吐露した映像が流れはじめました。動画が終わったところで、アランは改めてお願いをします。「夢を叶えたい人がいるなら、それを手助けするのが銀行マンの仕事じゃないか。お願いします。何もない人にも夢を見させてくれる映画を作ろうとしているんです」と。

しかし、一定の理解を示したものの、根拠(数字)が足りないとして却下。「数字ならあります」と言い、食い下がらないアラン。そこで、会議の様子をLIVE配信していたことを打ち明けます。加えて、クラウドファンディングで資金を集めていることも伝えます。そして、視聴者数と集まった融資額がこの映画への期待の表れ(数字)だと説いたのです。

ですが、許可なくLIVE配信していたり、クラウドファンディングをしていたりと、姑息なやり方が不満を買い、説得には至りませんでした。それどころか、首(解雇)まで宣告される始末。

そこに突如、頭取が現れます。一部始終を見ていた頭取は、クラウドファンディングの10倍を融資すると宣言するのです。この鶴の一声によって融資が決まりました。

セールスの肝は、誰を口説くか

ビデオ映像は感情への訴求(動機付け)。視聴者数や融資額は、論理への訴求(説得)。セールスライティングの基本の型です。
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「でも何だかんだ言って、最後は頭取(鶴)の一声じゃん。役員は説得できていないよね」といった反論があるかもしれません。確かに、会議室にいた役員らを説得できていません。ですが、ここにこそ学ぶべきことがあるのです。

セールスは「最終決定者(キーマン)を口説く」が鉄則です。逆説的に言えば、それ以外の人間をいくら口説いても意味がありません。アランは取締役員らを口説けませんでしたが、その上の立場にいる頭取を口説けました。だからこそ、上手くいったのです。

経営者は名誉欲の強い目立ちたがり屋

組織のトップになる人の多くは、名誉欲の強い目立ちたがり屋です。社長を口説く方法は、とにかく褒めて称賛して気に入られることです。見栄やプライドをくすぐるセールスをしていけば、大抵は上手くいきます。

アランのプレゼンは、LIVE配信中でした。
経営者の心理を考えれば、「今この場で融資のOKを出せば目立つし、称賛されるのでは?」となるはずです。あのタイミングで出てくるのがなんとも経営者らしい行動だと思いました。

この映画を作った人がそこまで考えていたかどうかは分かりません。ですが、私の目から見てセールスの肝や経営者の心理がよく表現されていると思いました。

この記事を書いた人
セールスコピーライター
深井 貴明

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。