『HUNTER×HUNTER』に学ぶ、スキルの高め方

特定のスキルを磨こうと努めるほど、ほかのスキルを磨く必要性や必然性が生まれます。一見横道に反れているように思えますが、結果的に特定のスキルを高めることに繋がるのです。

この不思議な現象について解説したいと思います。

この記事を書いた人
セールスコピーライター
深井 貴明

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

隣接するスキルを伸ばせば、中心スキルは伸びる

漫画『HUNTER×HUNTER』には、念という概念が出て来ます。この念には、6種類の系統があり、向き不向きが生まれによって決まっています。

ちなみに6系統には、強化系、変化系、放出系、操作系、具現化系、特質系があります。

主人公のゴンは、強化系の才を持っていました。
ゴンは、師匠となるビスケの下で念能力の修行をします。修行中、ビスケは強化系だけではなく、強化系に隣接する系統(放出系、変化系)も鍛えるよう教えます。そのほうが結果的に強化系の能力を伸ばせるからです。

私が専門とするセールスライティングに当てはめれば、何でしょうか。
SEOライティング、ストーリーテリングになるのかもしれません。

私の経験に照らしても、SEOライティングとストーリーテリングは、セールスライティングの上達に役立っています。現実世界でも、特定のスキルを伸ばすためにも、隣接するスキルを学ぶのは有効のようです。

深く穴を掘れ、穴の直径は自然と広がる

「深く穴を掘れ、穴の直径は自然と広がる」
やずやの創業者・矢頭宣男社長が大切にしている言葉だそうです。

まさに言い得て妙。私自身、今の仕事を通じて痛感しています。セールスライティングを仕事にしているのですから、マーケティングやセールス、ライティングは当然勉強します。

それとは別に、心理学、脳科学、進化生物学、文化人類学を学びました。言葉をより理解するために、言語学、ストーリーテリングを学びました。広告にまつわる法律、デザインも学ぶようになりました。

これらは、はじめから勉強しようと思っていたわけではありません。必要に迫られ、または必要だと感じるようになり、勉強するようになったのです。

外から見たら、関心事が多いように見えるかもしれませんが、私としては一つのことをしているつもりです。最近では、プレゼンスキルも学んでいます。セールスライティングに応用できるものが多分にあるからです。

では、セールスライターならみんなが私と同じような分野に関心や必要性を持つかと言えば、そうとも言えません。
重なる部分も当然ありますが、重ならない部分も出てくるのです。こうした重ならない部分が個性や差別化に繋がるのではないかと思います。

私の場合、進化心理学と行動経済学にどハマりしてしまいました。たぶん、この2つの分野にハマったライターは私以外にいないでしょう。この2つの学問は、相性がいいんですけどね。
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広ぐ学んでおいたほうが、一つの絞った時の伸びしろは大きい

書籍『RANGE(レンジ)ー知識の「幅」が最強の武器』(著 デイビット・エプスタイン)に、面白い研究結果が載っていました。一つの楽器だけを学んでいる子よりも、複数の楽器を学んでいる子のほうが上達が早いことが分かったのです。

スロボダたちは、イギリスのある寄宿音楽学校も調査した。その学校には、国内から生徒が集まっており、入学は完全にオーディションによって決められる。スロボダらが驚いたのは、学校で最優秀と認められている生徒たちは、それよりも成績が低い生徒たちに比べると、音楽にそれほど熱心ではない家庭の子どもが多く、楽器を始めた年齢も低いわけではなく、幼い頃には家に楽器がなかった家庭も多かったことだ。また、その学校に入る前に受けたレッスン数も、成績が下の生徒よりも少なく、全体的な練習量は圧倒的に少なかった。「正味の練習量や練習時間が、優秀さを示す適切なバロメーターにならないことは、非常にはっきりとしている」とスロボダらは述べる。
(中略)
一方で、スロボダたちはこう記す。「しかし、異なる楽器の練習をすることは重要なようだ。学校が『最優秀』と認めた子どもたちは、三つの楽器に比較的均一に取り組んでいた」。それよりもスキルの低い子どもたちは、まるでヘッドスタートによる優位を守ろうとするかのように、一つの楽器に時間を費やす傾向があった。最優秀の生徒たちは、いわばフィーリエ・デル・コーロのように成長した。「三つの楽器に程よく取り組んだことが、大きな効果をもたらした」と、スロボダらは結論づけた。(94-95ページ)

後々一つのことに絞るにしても、幅広く学んだほうが成長スピードが高まり、少ない時間で技術を習得できるようになるのです。

同書では、随所に幅広くぶほど、抽象的なモデルをより多く構築することになり、知識を応用するのがうまくなると書かれています。とりわけ、アナロジー思考に好影響を与え、問題解決能力が高まると言うのです。