ストーリーテリングって、本当にビジネスに使えるの?

最近注目の「ストーリーテリング」。
この記事を読まれているということは、きっとあなたも学ばれているのでしょう。

ですが、書籍でいくら勉強したところで、使いこなすことはできないでしょう。なぜなら、書籍で語られるストーリーテリングは”商業作品(小説や映画)”のストーリーを作るためのものであって、商品を売るためのストーリーではないからです。

ここの違いが分かりますか?
商業作品は、ストーリーそのものが商品です。一方、ビジネスで求められるのは、商品価値を伝えるためのストーリーです。この構造の違いにより、商業作品のストーリーテリングをそのままビジネスに当てはられません。ビジネスで使うには、変換する必要があります。

アナロジーで考えれば、ランチェスター戦略がまさにそれです。
元々は、F・W・ランチェスター氏が軍事用として開発した戦略論です。それを田岡信夫氏がビジネス用に変換し、日本に広げました。

考えてみてください。
戦争は、自軍と敵軍の二者ですが、ビジネスは自社と競合、そしてお客の三者です。元々の戦略論をそのままビジネスに持ってこられないのが、お分かりいただけますね。同じようにストーリーテリングも、「商業作品のストーリー」から「商品販売のストーリー」へと変換する必要があるのです。

今回は、商業作品のストーリーテリングを商品販売へと変換するコツについてお話しします。
※今回お伝えするのは、コピーライティングにストーリーテリングを用いた場合を前提としています。

アナロジー思考を鍛えるジーニアスノート

この記事を書いた人
セールスコピーライター
深井 貴明

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社の専属コピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

目次

ビジネスに使うストーリーテリングには「過程」は不要

ストーリーの肝は「変化」です。
主人公が村を出て世界を平和にする話は、状況の変化。
人間関係の中から主人公が成長する話は、内面の変化。
主人公の生き様を見て周りが変わる話は、周囲の変化。

このように「変化」は必須です。
どんなストーリーにも必ず「変化」があります。もしなければ、それはストーリーとは呼べませんね。商業作品でも、商品販売でも、これは同じです。

異なるのは、変化の「過程」の扱い方です。商業作品では、変化の過程を細かく描きますが、商品販売では割愛します。

化粧品を例に説明します。
肌に悩みを持つ女性が綺麗な肌になるストーリーがあったとします。「商業作品」なら、1日目、3日目、1週間目、1ヶ月目と肌の変化を追いかけるでしょう。しかし「商品販売」では、悩んでいた日から一気に肌が綺麗になった日へと話を飛ばします。

◯◯化粧水が届いた。私の肌はこれで綺麗になるのだろうか。そんな不安を抱えながら化粧水を手に垂らし、顔に塗った。1ヶ月後。私の肌は見違えるようになっていた。周りからも綺麗になったねと言われるようになった。

これでいいのです。
「えっ、本当にそれでいいの?」と思われたかもしれませんが、逆にお尋ねします。過程を知りたいですか? 知りたいのは、その商品を使ったらどうなるかですよね。ですから、過程はさほど重要ではないのです。多少は書いてもいいですが、あまり書き過ぎないようにしてください。脱線する元になります。

商業作品のストーリーテリングに倣えば、商品を手にした後に試練を書かなくてはいけません。しかしお客からしたら、わざわざ商品を手に入れたのに、試練なんか体験したくありません。試練は、商品を手にする前に書きます。このように、「商業作品」と「商品販売」ではストーリーのシナリオが異なるのです。

商品販売で伝える変化を別の言い方にするなら「ビフォー・アフター」です。
「寝られないほど不安な状況」→「明日が楽しみなほど幸せな状況」といった変化(ビフォー・アフター)を伝えるために、ストーリーがあるのです。

ビフォー・アフターは、ギャップが命

ビフォー・アフターと言えば、写真がよく使われますよね。
「ニキビだらけの荒れた肌」→「ニキビが一つもない艶のある肌」といったように。

このとき大事なのがギャップです。肌が荒れていれば荒れているほど、綺麗になったときとのギャップが大きくなり、商品の魅力として映ります。

商品を売るためのストーリーでも同じです。どれだけドン底を描けるかで決まります。悩みが深ければ深いほど、解消したときとのギャップが大きくなります。

読者(ターゲット客)と似た考えを持つ主人公が読者と同じ問題を抱え、深く悩む。自助努力するが上手くいかない。どうしていいのかとさらに悩む。まさにドン底、八方塞がり。(この後、売りたい商品と出合う)

ドン底の描写が上手くできれば、読者は自分と重ねながらストーリーを読み進めてくれます。その後のアフターにも共感してくれます。

読者の心を掴むためにも、読者の価値観や悩み、性別、年齢などをハッキリとさせておきましょう。なぜ問題を抱えたのか、どんなふうに悩んでいるのか。ここをしっかりと理解してからストーリーを作ってください。

変化を写真で伝えられない商品こそ、ストーリーを

ダイエット、洗剤、リフォームなどの商品(サービス)は、写真で変化を伝えられます。
しかし、すべての商品が写真で変化を伝えられるわけではありません。変化を写真で伝えられない商品のために、ストーリーがあるのです。

補足。
「写真で変化を伝えられる商品にはストーリーは必要ない」というわけではありません。写真で伝えられるのは、あくまでも「状況の変化」です。「心の変化」や「周囲の変化」は写真では伝えられません。それらを伝えるには、やはりストーリーを使う必要があります。

アフターに入る前に「期待」をさせる

ビフォーからアフターに移行する前に、商品との出合いが必ずあります。
このときのコツは、商品のベネフィットや特長をそれとなく伝え、期待を持たせることです。

簡単な例を挙げましょう。

塾の広告には、半年間で偏差値20アップと書いてあった。私と同じ偏差値から見事有名高校に合格した人の体験談が載っている。バスケの強いA高校へ行くために受験勉強を頑張ったと書いてあった。私と同じだ。私は水泳の強いB校に入りたい。こんな私でも、彼女みたいになれるかも……。小さな勇気が湧いてくるのが分かった。家に帰りさっそく母に相談する。頑張りなさいと応援してくれ、即座に母は塾に電話をした」

ベネフィットや差別化要因の尺は、この程度でいいのです。詳しい説明は、ストーリーが終わった後にします。

感動させても売上には繋がらない

ストーリーを作る際、「感動させよう」などと考えてはいけません。
感動は、商業作品には必要ですが、商品販売には必要ありません。

たまに、感動CMが話題に上がることがありますが、売上には繋がりません(ブランディングやイメージアップには貢献するのかもしれませんが)。実際、感動系CMを見ても、何かを「欲しい」とはならないはずです。

バスった経験がある人なら何となく分かると思います。「あれ、◯◯万もPVがあるのに、商品が売れていない」と。私も何度か経験があります。感動CMもそれと同じです。バズっているのが感動であって、商品ではないため、売上には結びつかないのです。

副次的に感動するなら構いませんが、わざわざ狙う必要はありません。大事なのは、商品がどのような変化をもたらすのか。それをちゃんと伝えることです。

3つの異なるストーリー

男性と女性では、ウケるストーリーが異なる

「男性は問題解決、女性は共感を重んじる」。
そんな話を聞いたことがあると思います。

男性脳や女性脳については賛否両論ありますが、私は脳には性差があると考えている側です。世界中の文化を見ても、消費行動を見ても、男女に性差があるのは明らかです。社会的圧力だけでは片付けられません。さらに私は、生物学や進化心理学をかじっているため、「肉体的な差のみで、生まれつき脳に差はない」とする論は、へそで茶をわかすレベルです。

ファッションを例に解説しましょう。
男性は車や時計にお金をかけたがりますが、これはマウンティングの一種です。経済的な地位を示すことで、同性を負かし、異性を惹き付けるためです。一つの武器として機能しているわけですね。このように男性は、ファッションに「状況の変化」を期待しているのです。

一方女性は、男性とはだいぶ趣が異なります。なおかつ、複雑です。
婦人服売り場を見ても分かる通り、紳士服売り場の3倍もの面積があります。ここまで多くの服を求めるのには、いくつかの理由があります。一つは異性を惹きつけ(ただしカースト上位に限る)、引き止めるため(飽きさせない)。もう一つは、プラシーボ効果です。魅力的な服を着ることで自身の自己重要感を上げているのです(自己重要感が上がることで、自分にふさわしいと思う男のランクが上がる)。もちろん、純粋に楽しんでもいます。このように女性は、ファッションに「心の変化」を期待しているのです。

男女の差はノート術でも顕著です。
情報を整理するためのノート術には男性が多く集まり、心を整理するためのノート術には女性が多く集まります。同じように、お金儲け系に男性がハマりやすく、スピリチャル系に女性がハマりやすいのも、求める「変化」が違うからなのです。

ストーリーを作るうえで、この点は念頭に置いておきましょう。
男性は、自身の外にある問題を解決して成功するストーリーが好きです。(状況の変化)
女性は、自身の内にある問題と向き合い解決するストーリーが好きです。(心の変化)

こちらのツイートも参考になります。

スクロールできます
https://twitter.com/NovelPengin/status/1613761117763014657
続きはも隣にコピペしてあります。

図を見てもらえれば大方わかるんですが、まず物語をつくるときの主人公の課題をどこに設定するかが全然違うことが多いです。 顕著なのは、女性作家さんだと『血筋/家柄』原因になったりするので、主人公が元王子設定とかになりやすいです。 で、解決も家との和解に設定されますが、男が書くと↓

家柄とかそもそもあんまり無くて、シンプルに『成り上がるぜ!』みたいな感じが多い。 なので、そもそも主人公は才能ゼロの中堅冒険者とかに設定されて、過去の掘り下げとかはかなり遅い(されないことも多い) これは、主人公の解決すべき課題の作り方が、内側なのか外側なのかで根本的に違うせい↓

でもそれは異世界系だったらってだけでは?と思われるかもなので、同じ主人公設定で『現代舞台で主人公がアヤカシを視ることができる能力持ち』になった場合で考えたのが3,4枚目の図。 よく見かけるのは、男性向きだと主人公はその能力を使って、人助けをしたりして報酬を得ていく。↓

対して、同じ主人公設定でも女性向きになると、その力のせいで友達ができなかったとかで、力自体を嫌ってることが多くて、その力を無くして普通になろうとするとかの目的が多い印象。 でも、結果的にその力も悪くないよねって能力との和解をして、自分を認めるみたいなのが多い。これ男性視点だと↓

問題解決してね?って言われがち。 こんな感じで、同じ主人公でも動機と目的が変わってくることがある。 もちろん、最近の漫画とかだとこれらが混在してることも多いので、男性向けに作られた作品が女性に受けるとかもありえたりする。 この辺、研究すると面白いかもね。↓

という感じで、別にそんなすごい発見!でもないですが、最近女性作家さんが男性向きで考えました!って企画の相談を受けることが多いので、女性も男性向き作品書きたくて困ってる人もいるのかなと思ったので解説してみました。 より具体的には、作品とか企画見てみないとわかんないので↓

BB小説家コミュニティの作家さんとかは壁打ちとか、編集相談会とかで相談してみてください。 これの考え方がわかってるだけでだいぶ作品の方向性わかりやすくなるはずですが…! ちょこっと参考になると嬉しいです。

見やすいように画像を載せておきます。

文字と映像では、表現が異なる

今回お伝えしたのは、文字によるストーリーテリングです。セールスレターやLPに使うことを前提としています。これが映像や漫画となると、表現の仕方がまた異なってきます。

たとえば、商品との出合いを表現しなくても構いません。すでに商品を使っている前提で話を進めることもできます。また、変化の過程を見せるのもありです。映像や漫画は文字とは違い「ドラマ性」が求められるため、こうした演出が必要になります。ですが、表現の仕方が異なると言っても、本質的には同じです。

ブランディングとセールスでは、ストーリーが異なる

ストーリーテリングを学ぶと、アメリカの成功例をいくつか目にするはずです。しかし、成功例の多くは、「Apple」「Coca-Cola」「Airbnb」「Nike」「Patagonia」「Dove」といった大企業ばかりです。これら企業が用いるストーリーは、大衆向けにイメージアップを図る「ブランドストーリー」です。

先述した通り、こうしたストーリーは直接的な商品購入には繋がりません。あなたが知りたいのは、直接的に商品が売れるセールスストーリーのはずです。

ブランドストーリーをセールスストーリーとして使っても失敗するだけです。ただ残念なことに、セールスストーリーについて解説している書籍はほとんどありません。

ですが、安心してください。
私のサイトでは、セールスストーリーについてしっかりと解説しています。しかも無料です。

まとめ

ストーリーは、目的や表現手段、対象によって正解が異なります。こうした区別が共有されていないため、ストーリーテリングを学んでも、どこかでつまずいてしまいます。

本サイトでは、ストーリーを区別しつつ、セールスレターやLPで使えるストーリーについて解説しました。セールスストーリーについて解説した記事はほかにもあります。ぜひ一読ください。

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この記事を書いた人

深井貴明のアバター 深井貴明 セールスコピーライター

広島県在中。
1999年~2009年の約10年間、飲料水、化粧品、医薬部外品、エコ商品などを製造販売する会社に勤務。そこでコピーライティングに出合い、実践と研究を繰り返す。FAXDMだけで90日間に1,533件を新規開拓、2,000件に満たないリストから1億円を売り上げるなどの成果をあげる。
2009年からセールスコピーライター&コンサルタントとして活動を始める。東証上場企業、非上場の大手企業、アフィリエイト専門会社のコピーライターとして従事。ほか、個人事業主から中堅企業までの広告・販促物制作に携わる。
「進化心理学×行動経済学」の知見をセールスライティングに落とし込んだ独自の理論を提唱している。

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