長年愛され続けているTVドラマ『孤独のグルメ』。かれこれ、もうシーズン11です(2026年9月時点)。
あまりの長さに、主演の松重豊さんが自虐的なコメントをするのも、もはや恒例になっていますよね。
ではなぜ、こんなにも長く愛され続けているのか。
セールスコピーの観点から考察をしていきたいと思います。
前半の仕事は、食事を楽しむための「前戯」
『孤独のグルメ』の構成は、前半は仕事、後半は食事となっています。
つなぎ目として、お決まりの台詞「腹が、減った…」があります。
ドラマ版Season1第1話でも、五郎は門前仲町のカフェを訪れます。
そこでひと仕事を経て、富岡八幡宮へ立ち寄り、空腹を感じて食事処を探し始めます。
なぜ、食事の前の話を描く必要があるのか。
私は、前半が食事を楽しむための「前戯」になっているからだと考えます。
ひと仕事を終え、街を歩き、腹を空かせる。視聴者は五郎と一緒に時間を過ごしているからこそ、その後の食事が引き立つのです。
一方、よくある食レポ番組は食事から入ります。
これでは、前戯なしで本番に突入しているようなもの。色気も情緒もありませんよね。
いきなり料理だけを見せられても、登場人物に共感や感情移入をすることはできません。
しかし、五郎が空腹になるまでを一緒に過ごしていると、料理を口にした瞬間の「うまい」にまで感情がついていけるのです。
セールスコピーにおいて、この「前戯」に当たるのが「悩み」の部分です。
悩みを書く目的は不安を煽ることではありません。その後に登場する商品やサービスを「自分に必要だ」と感じてもらう文脈を作るためです。
つまり、商品を説明する前に、まず「その商品が欲しくなるまで」を体験させる。
『孤独のグルメ』は、食事が始まる前からすでに「美味しい」を作り始めているのです。
「美味しかった」ではなく、「美味しい」を見せる
食事が始まってからも、『孤独のグルメ』は結果の報告だけでは終わりません。
第1話では、五郎が常連客のつくねと生ピーマンの食べ方に興味を持ち、同じものを自分も注文します。そして、生ピーマンにつくねを入れて食べ、苦みとおいしさが同居する味を発見します。
ここで見せているのは、「つくねとピーマンが美味しかった」という食後の感想ではありません。
他人の食べ方が気になる。自分も頼む。口へ運ぶ。そして「美味しい」という所感を得る。
ここで効いているのが、「美味しかった」ではなく「美味しい」と、その瞬間を現在形で見せていることです。
想像してみてください。
「この作品、めちゃ面白かったよ!」と言われるのと「この作品、めちゃ面白い!」と言われるのでは、どちらのほうが面白そうに思えますか?
「面白かった」は、体験を振り返った報告です。一方、「面白い」は、いま目の前で感じている評価のように聞こえます。だから、言葉に鮮度や体温が残ります。
書籍『「ことば」の戦略』(著 ジョーナ・バーガー)にも、こんな記述があります。
同僚グラント・パッカードと私は、動詞の時制を変えることが説得力に影響を与えるのか、誰かが何かを言うときに、たとえば現在形のほうが過去形よりも相手を説得しやすいと言えるのかを判別したいと考えた。説得力の度合いを測るため、筆者チームは100万件を超えるオンラインレビューを分析した。
(中略)
まずは書籍から始めた。書籍についたアマゾンの数十万件のレビューを分析したところ、現在形で書かれたレビューのほうに強い影響力があることがわかった。ある本を「おもしろい」と表現するほうが「おもしろかった」とするよりも、また、プロットが「優れている」と表現するほうが「優れていた」とするよりも、読んだ人がそのレビューを役に立ったと感じる度合いが大きかったのだ。(p96-97)
さらに、商品カテゴリを変えて調査しても、同じ傾向が見られたと記述されています。
音楽のレビューのなかで、動詞の現在形を多く使っているものほど、他者に購買を促す説得力が強かったのだ。
書籍と音楽以外のさまざまなカテゴリの商品(たとえば、家電品)やサービス(たとえば、レストラン)に範囲を広げてみても、同じパターンが現れた。何についてのレビューであっても現在形のほうに強い影響力があった。この歌は「すごくよかった」よりも「すごくいい」のほうが、このプリンターは「印刷品質がよかった」よりも「印刷品質がいい」のほうが、このレストランのタコスは「うまかった」よりも「うまい」のほうが、それぞれ多くの人にレビューが有益で参考になり、説得力があると受け止められたのだ。(p97-98)
この研究では、現在形は話し手の確信を強く感じさせ、その結果、説得力を高める傾向が示されています。
セールスコピーでも同様です。
結果を報告するだけでなく、その瞬間の言葉やプロセスを見せることで、言葉に「いま起きている感覚」を持たせられます。
次は、具体的なやり方を解説します。
プロセスを見せて、疑似体験させる
五郎が料理を注文し、口へ運び、味わい、感想をこぼす。その一連のプロセスを見せることも、視聴者を疑似体験へと引き込んでいます。
これはセールスコピーにも応用できます。
あなたは、お客様が商品やサービスをどのように体験するのか、その流れを画像付きで見せていますか?
プロセスを見せれば、お客は購入前でも「自分が使ったらどうなるか」を具体的にイメージできます。それにより、欲求を強め、「買ったあと何が起こるかわからない」という不安を減らせられます。
この「プロセスを見せて疑似体験させる」という方法は、さまざまな場面で使えます。
・申し込みまでの流れ
・商品を使う流れ
・変化(効果)の流れ
など。
こういったプロセスが、あなたの商品・サービスにもきっとあるはずです。
私は過去に、反応ゼロで悩んでいたビルメンテナンス業者のDMを作り直した経験があります。
DMでは、施工の流れや契約の流れを写真と図を使いながら説明しました。
その結果、2,000万円近くを売り上げました。
ほかにも、私が記事LPを作る際は、CTAボタンを押した先にあるLPの画像などを見せ、イメージしやすくします。
(例)
1.この記事の下にあるボタンを押す
2.遷移先のLPの申し込みフォームに入力する(画像)
3.メールアドレスに届く動画を見る(画像)
ボタンを押したらどこへ移動するのか。メールアドレスを登録したら何が届くのか。そこまで見せれば、その後の行動を具体的にイメージでき、不安も減らせます。
もしあなたがエステサロンを運営しているのなら、施術を終えるまでの流れを画像付きで説明してください。
もしあなたが観葉植物を販売しているのなら、どんなふうに育っていくのかを画像付きで説明してください。
購入後の姿をイメージしやすくなり、購入までの心理的な距離を縮められます。
『孤独のグルメ』のように「美味しい」を疑似体験させる工夫を凝らしてください。
まとめ
『孤独のグルメ』は、空腹になるまでを描き、その空腹が満たされていく過程までを見せています。
セールスコピーも同じです。
商品が良いと説明するのではなく、読者が「欲しい」と思うまでを見せる。そして、商品を手にしたあとの「良い」まで、買う前に疑似体験させる。
説明で納得させるのではなく、体験で欲しくさせる。
『孤独のグルメ』が「美味しい」を体験させるように、あなたの商品も「使ったらどうなるか」を、買う前から体験させてください。
アナロジーと事例を使った
SEO、AIOに強い記事が書ける
以下、参考文献

深井 貴明
広島県在住。
1999年から2009年までの約10年間、飲料水・化粧品・医薬部外品・エコ商品などの製造販売会社に勤務。在職中にコピーライティングと出合い、実践と研究を重ねる。FAXDMだけで90日間に1,533件の新規顧客を開拓し、DMのみで1億円の売上を達成するなど、数々の成果を上げる。
2009年より、セールスコピーライター兼コンサルタントとして独立。東証上場企業をはじめ、非上場の大手企業やアフィリエイト専門会社のコピーライターとして活動。また、個人事業主から中堅企業まで幅広く広告・販促物の制作を手がけている。
単なるライティングにとどまらず、常にマーケティング戦略の見直しから取り組み、成果へとつながる言葉を生み出すことを信条としている。





